建設業における生産性向上、働き方改革を実現するにあたっては、ICTを活用した施工や、生産プロセスそのものの変革が重要であり、建設重機の自動化や遠隔操縦、自律化に大きな期待が寄せられている。特にバックホウは、地盤の造成やトンネル掘削といった土木工事、大規模建築物の地下掘削における土砂の積み込みなど、施工における膨大な作業に用いるため、その自律化による効果が非常に高い建設重機である。
効率の良い掘削作業を実施するためには、バックホウが掘削しやすい位置に土砂をかき寄せ、安定した土砂量を正確に掘削できることが重要であるとともに、ダンプトラックで搬出・運搬する際には、過積載の抑制や運搬中に崩れ落ちないよう適切な荷姿を形成する必要がある。
株式会社大林組、日本電気株式会社(以下、NEC)、大裕株式会社は、2019年にセンシング技術とそれらを統合管理する「ネットワークドコントロールシステム(※1)」や、NECの「適応予測制御技術(※2)」、大林組と大裕が共同で開発したメーカや機種を問わず対応が可能な汎用遠隔操縦装置「new windowサロゲート」を活用したバックホウ自律運転システムを開発している。
このほど、3社は、共同開発したnew windowバックホウ自律運転システムを、大林組が施工するトンネル工事現場にて土砂の積み込み搬出に適用する実証実験を行った。
自律運転は、ダンプトラックの運転手が現場に備えつけたボタンを押すことで開始され、一定量の積み込みが完了すると自動で停止するため、その間、人手による作業が発生しない。自律運転中、オペレータは、遠隔地に設置したモニターで、施工ヤード各所に配置した複数台のカメラからの俯瞰映像や、バックホウの姿勢や状態、掘削エリアとダンプトラックへ積み込んだ土砂形状などのセンシング情報をリアルタイムで監視する。
加えて、遠隔操縦に切り替えることで、オペレータは、現場のカメラ映像や作業音などをもとにバックホウを操作できる。1人のオペレータが複数台のバックホウを同時に監視することで、省人化を実現した。
さらに、バックホウの動作をより高精度に制御することで、正確な掘削作業と公道運搬に適した荷姿に整形するなど、一連の作業を通じて、単に同じ動作を反復するのではなく、人手と同等の作業を実現した。また、ベッセル(荷台)の形状を深度カメラで認識し積み込みを制御することで、あらゆる形状のダンプトラックに適応できるという。
今後は、施工現場への実適用はもとより、台数を増加させることによるさらなる生産性向上や、屋外環境への対応、他の建設重機との連携といった技術の拡張に取り組む予定としている。
※1 ネットワークドコントロールシステム:制御システムの一形態。通信ネットワークで制御に必要なセンサデータを収集し、通信ネットワーク経由で対象を制御するシステム。
※2 適応予測制御技術:制御対象の動特性の変化に適応する「適応制御」と、制御対象の動きを予測することで応答遅延に対応する「予測制御」を融合したNEC独自の制御技術。
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