いまさら聞けない、携帯電話システムのメリット
小泉: 「LTE over IP」では、具体的にどのようなことができるのでしょうか。
池田: 一つは、インターネット(IPネットワーク)でも、携帯キャリアと同じサービスを提供できることです。たとえば、ある企業や自治体だけの(インターネットに抜けさせない)閉域ネットワークを構築できます。あるいは、特定のコンテンツにだけアクセスするしくみも簡単につくれます。
池田: もう一つは、携帯電話と同じレベルのセキュリティを担保できることです。携帯電話システムのセキュリティが高い理由は、(1)悪意のある端末が接続できない、(2)通信の「盗聴」を防止する、(3)危険なサイトにアクセスすることを防ぐ、この3つのしくみがあるからです。
1つ目については、SIM認証によって、そもそも悪意のある端末は接続できないしくみになっています。インターネットとは大きく違う点です。
2つ目は、携帯電話システムの場合、「刹那的な暗号化」がされているので、たとえ一時的に暗号化のカギが解読されたとしても、すぐに解読できなくなります。
3つ目は、EPC(Evolved Pakcet Core)と呼ばれるコアネットワークで接続先を制御するしくみです。これにより、前述のようなインターネットに接続させない閉域のネットワークを構築したり、検疫ソリューションなどのソフトと組み合わせて、ユーザーが危険なサイトにアクセスすることを防止することができます。
一方、携帯電話システムにも問題点があります。1つは、キャリアが提供している物理SIMがないとネットワークに接続できないということです。IoT機器に物理SIMを差し込むスロットをつくろうとすると、コストがかなり高くなります。そのため、機器のIoT化の障壁になっているのです。
もう1つは、繰り返しになりますが、国から割り当てられる「ライセンスバンド」が必要なことです。携帯電話システムを構築するには、免許を取得し、ライセンスバンドを割り当ててもらう必要があります。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。