SIM認証をソフトウェアで実装する世界初の技術
池田: この2つの問題を解決するのが、LTEプロトコルを汎用的なIPネットワークで実装する「LTE over IP」です。
通常の携帯電話システムでは、携帯キャリアがSIMを発行しますが、「LTE over IP」では、弊社がSIMを発行します。SIM情報を物理的なICチップに書き込むこともできますし、IoT機器などのSIMスロットがない端末向けにソフトウェアとしてSIMを提供することも可能です。
小泉: LTEの特徴は、ICチップ(物理SIM)をハードウェアに実装することで「一意性」(偽物をつくれないということ)を担保できるということでした。ソフトウェア化をすることで、その本来のメリットは損なわれないのでしょうか。
池田: SIMで使われている情報をOSやチップセットのセキュアな領域に書きこむことで問題は回避できると考えています。Windows OSやARMのチップセット、クアルコムのSnapdragonなど、世の中に存在する様々なOSやチップセットの中に、セキュア領域は既に実装されています。そこに書きこんだ情報は、二度と消せません。そのことによって、「一意性」は担保されます。
小泉: なるほど。ソフトウェア的にといっても、ハードウェアのレベルでしっかりセキュリティが担保されているということなんですね。
池田: まさに、そういうことです。従来のLTEのしくみでは、SIMという「目に見える」物理的なアセットの中に必要な情報が書きこまれていて、情報は絶対に抜きだせないという保証がありました。しかし今は、OSやチップセットレベルで、そうしたセキュアなしくみが実装されているので、それを使って「一意性」を担保することができるのです。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。