自治体や学校で実証実験が進行中
小泉: ターゲットとなる事業領域には、どういうものがありますか。
池田: 働き方改革関連法案が施行され、今後リモートワーク環境の整備が進んでいきますが、まずはその領域の事業が大きな柱になります。
具体的には、会社内だけではなく、自宅やリモートワーク環境下で、簡便かつ安全に社内ネットワークやパブリッククラウドサービスに接続できるソリューションを提供していきます。
また、自治体などの公共領域も大きなターゲットと考えています。例えば昨年、長野県上田市と共有データプラットフォームをつくる実証実験を行いました(総務省「StartupXAct 2018」採択事業)。
ここでは、上田市を含む9つの市区町村が連携して、広域エリアの経済活性化をはかるために、様々な情報連携をいかに行うかが課題でした。そこで、「LTE over IP」を用い、9つの市区町村を1つの閉域ネットワークとすることで、この課題を解決しました。
また、教育ICT領域も大きな事業領域となります。この分野では文科省が主導し、教育現場にICTを導入する動きが進んでいます。
教育現場では、生徒用、教員用など、要求条件の異なるネットワークが複数混在し、各ネットワークのセキュリティや独立性をどのようにして担保するかが問題となりますが、「LTE over IP」を使えば、利用者のニーズに合致した複数のネットワークを単一の物理ネットワーク上に仮想的に構築することが可能となります。
池田: 具体的な運用例をご紹介します。生徒にタブレットなどの情報端末を配布し、それらの端末から教育コンテンツにアクセスする場合、情報端末が校内のネットワークに接続されている場合には、特定のコンテンツにしかつなげないようになっています。
一方で、家に持って帰ったあとはそうした制御がなされておらず、生徒は家でインターネットにつないで動画サイトを見ることができてしまいます。このため、持ち帰り学習をしたいというニーズがあったとしても、情報端末を持ち帰ることができないといった課題がありました。
「LTE over IP」を使えば、学校、家、図書館どの任意の場所からインターネットにつないでも、特定のコンテンツにしかアクセスできないようなソリューションが容易につくれます。これにより、持ち帰り学習を推進することが可能となります。
小泉: その場合、生徒が持っているタブレットは、通常のインターネットに接続できなくなるのですか?
池田: ケースバイケースですが、現在行っている学校の実証実験では、「LTE over IP」のソフトウェアが常に起動していて、通常のインターネットに接続する機能を無効にしています。
小泉: なるほど。完全に接続できないモードになっているわけですね。
池田: はい。一方、用途に応じてON/OFを切り替えてもらうこともできます。
例えば「働き方改革」において、個人用のデバイスを仕事に用いる「BYOD(Bring your own device)」の場合には、個人の使用を制限することはできませんから、仕事の用途で使う場合だけ、弊社のソフトウェアをONにする、ということができます。
小泉: 「LTE over IP」のしくみから活用例まで、貴重なお話をありがとうございました。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。