3. 水滴だけで発電し、スマートフォンにデータを送信
武内: 一つ目は、「おむつ用ワイヤレス発電センサ」です。4年ほど前から立命館大学の道関隆国教授と共同開発を行っています。今年の3月に「トレたま」というテレビ番組(テレビ東京)でもご紹介いただきました。
道関先生が開発した「無線尿失禁センサ」は、水分に触れると少しだけ電子を発生します。そこで発生する電力は僅か60マイクロワット(マイクロはミリの1,000分の1)ほどで、このままでは無線通信には使えません。そこで、その微小な電力を弊社の「CLEAN-Boost」で蓄電・昇圧し、無線通信を行うのです。
もう一つは、「植物発電センサ」です。これも道関先生と共同で開発を行っています。木の樹幹には「道管」という水分の通り道があります。樹幹に電極を刺し、そこを通っている水分で発電するしくみです。現在、ある自治体と実証実験を行っています。
この取り組みはとても面白くて、当初は「電池がなくても木があれば発電できる」というコンセプトで、発電そのものを目的にしていたのですが、あとから植物の生育状態をモニタリングできることに気づきました。
吉田: どういうことでしょうか。
武内: 水が植物の道管を通ると発電し、そのエネルギーがデバイスに蓄えられ、電波が送信されます。その送信間隔を見ることで、植物がどれだけ水分を吸収しているかがわかるのです。そのデータが光合成の活性度と相関がないかどうか、今調べているところです。
吉田: なるほど。面白いですね。
武内: ええ。甘い果物を育てるなど、目的に応じて最適な水やりのタイミングを可視化できるのではないかと考えています。
エイブリック 山﨑太郎氏(以下、山﨑): 「土壌水分計」はすでに市場に出回っていますが、測れるのは表面の水分のみです。実は、植物はすごく深くまで根を張ります。とくに甘い果物などがそうです。
ですから、表面の水分しか測れないと、植物の状態が厳密にわかりません。私たちのソリューションの場合、植物の道管の水分を直接測りますから、精度よく可視化できます。

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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。