ボッシュは、IoTサービス向けの自社開発クラウド「Bosch IoT Cloud」をドイツ国内のコンピューティングセンターでスタートさせた。このIoTアプリケーションは、「Bosch IoT Suite」をベースに作られている。
「Bosch IoT Suite」は、デバイス、ユーザー、企業それぞれをつなぐために必要なすべての機能を提供でき、現在500万台以上の各種デバイス/機械が「Bosch IoT Suite」を介してその他のデバイスやユーザー、企業とつながっている。ネットワーク化された世界に貢献する新しいボッシュのソリューションや製品の例を紹介する。
目次
コネクテッドモビリティのためのソリューション
利用可能なパーク&ライド*スペースをセンサーが検知
最寄りの利用可能な空き駐車スペースはどこにあるか?という、すぐに対処しなくてはいけないこの疑問に対して、ボッシュの新しいシステムはひとつの解決法を提供している。
シュトゥットガルトの通勤列車S2およびS3線の沿線にある15カ所のパーク&ライド*施設では、設置されたセンサーが空き駐車スペースの有無を検知している。そのデータはインターネットを介して「Bosch IoT Cloud」に送られ、駐車可能なスペースの最新マップにインプットされる。ユーザーはこうした情報をアプリやVVS(シュトゥットガルト交通局)のHPで確認でき、利用者の時間節約につながることが、システムの大きなメリットだ。パーク&ライド*施設に空きスペースがあると分かれば、より多くのドライバーが自家用車を駐車して公共交通網を利用すると考えられ、結果的に交通渋滞の減少にもつながる。
このパイロットプロジェクトでは、最も小規模な駐車場で49のスペース、規模が最大の駐車場で520を超えるスペースが提供されている。センサーの設置は2016年に始まり、プロジェクトは2018年6月まで続く予定。
*鉄道の駅やバス停近くに自家用車を駐車し、その後公共交通機関を使用する交通システム
疲れたトラック運転手のために駐車スペースを用意
高速道路沿いにあるトラック運転手向けの休憩エリアがかなり混雑していることは少なくない。この状態は、特に盗難のリスクが高まる夜間に深刻になっている。
そこでボッシュは、物流管理会社、フリート運用者、個人営業のトラック運転手向けの駐車場予約サービスの提供を開始する。このサービスを利用すると、トラック運転手は安全な駐車スペースを事前に予約できるようになる。
駐車できる休憩所を探したい場合は、トラックからシステムに現在地の情報と駐車リクエストを送信すると、システムが最寄りの駐車スペースを予約し、その詳細を直接トラックのナビゲーションシステムに送る。なお、この予約と料金の支払は自動的にキャッシュレスで行われる。
同システムは、2016年夏にスタートする「Bosch IoT Cloud」上で作動する予定。
安全な運転を心がけるドライバーに割引サービス
ドイツの大手保険会社は、安全な運転を心がけるドライバーのために保険料割引サービスを始めている。ボッシュのオートモーティブ アフターマーケット事業部は、このサービスを実現するための技術をコネクティビティ コントロールユニット(CCU)という形で提供している。
車両に組み込まれたこのCCUは、加速度、最高速度、コーナリング速度のデータを収集するために車両のOBDインターフェースに接続されている。CCUはこの情報を暗号化し、内蔵SIMカードを使用して携帯電話のネットワークを経由し、それをコンピューターシステムに送る。保険会社はこの情報に基づいてドライバーのプロフィールを作成し、特に安全な運転を心がけているドライバーに割引サービスを提供する。
コネクテッドインダストリーのためのソリューション
輸送用ボックスを監視
製造工程中の製品品質がほぼシームレスに監視される一方で、サプライチェーンの終盤で何が起きているかわからないことはよくある。
これに対応するための解決策となるのが、ボッシュのインダストリー4.0ソリューションである「TraQ」(tracking and quality)だ。この「TraQ」があると、顧客に届くまでのサプライチェーン全体にわたり製品の品質を追跡できるようになる。
輸送用のパッケージや製品本体に取り付けられたセンサーが、温度や振動、明るさ、湿度のレベルといった品質に関連する情報を記録し、これをクラウドに送信。そして、クラウド上のソフトウェアがその測定値を許容レベルと比較し、これらの数値のひとつでも許容レベルを超えた場合、顧客、サプライヤー、サービスプロバイダーにリアルタイムで警告する。センサーから位置情報も伝えられるため、予想到着時刻も算出できるようになり、輸送管理の最適化にもつながる。
リアルタイム通知により、商品が破損した場合でも迅速に措置を講じることができ、生産停止やその後にかかるコストを最小限に抑えることができる。また、製品本体に組み込まれたセンサーは、輸送中とエンドユーザーが使用しているときのどちらの場合でも損傷の原因を特定するのに役立つ。
「TraQ」は目下、ボッシュがデジタルサプライチェーンのコストパフォーマンスの優れたインテリジェント管理を実現するために取り組んでいるさまざまなソリューションのカギを握るコンポーネントとなっている。
このセンサーソリューションは、2017年の市場導入が予定されている。
高品質なアスパラガスの生産に寄与するワイヤレスセンサー
ボッシュは、ネットワーク化された無線センサーを利用して、大量生産されるアスパラガスの生産量を向上させようとしている。アスパラガスの生育適温は18~22℃で、この温度を保つために、片面が黒、もう片面が白の細長い両面ホイルで盛り土をカバーしている。日光を利用して土壌の温度を上げる場合は、ホイルの黒い面が表向きになるように敷き、土壌温度が高くなり過ぎた場合には、それを下げるために白い面を表向きにしてホイルを敷く。
こうした正確な温度維持をサポートするために、ボッシュのスタートアップ会社であるDeepfield Roboticsは、地面のさまざまな深さに埋め込んだ複数のセンサーを使用して温度を測定するソリューションを開発した。温度の測定値はケーブル経由で小さなボックスに送られ、そこから無線でデータが「Bosch IoT Cloud」に送信され、アプリにより農家のスマートフォンにも転送される。農業経営者はこのデータをもとにアスパラガスの温度変化を詳細に追跡できるため、アスパラガスの成長条件を最適に保つために迅速に行動できるようになる。
コネクテッドホームのためのソリューション
スマートホームにおける安全性と快適性
Bosch Smart Home Systemは、単一のプラットフォームを介して家庭内の空調、照明、火災警報器と家電製品をつなぎ、スマートフォンやタブレット端末で簡単に操作できるシステムを開発した。
このシステムの中核にあるのはコントローラーで、この住宅用セントラル コントロール ユニットにより上記の各種機器がインターネットで相互接続される。その他のシステムエレメントには、インテリジェントなラジエーターサーモスタットとセンサーベースのウィンドウコンタクトが含まれる。
スマートホームで収集されたデータは、すべてスマートホームコントローラーに保存される。つまり、ユーザーは自宅の全データを常にコントロールすることが可能になる。ユーザーが外出先で自宅の温度をスマートフォンで呼び出した場合にのみ、インターネットを介してデータが送信され、このデータは「Bosch IoT Cloud」上で送信される前に暗号化される。
将来的には、窓やドアが開いたときに、システムがスマートフォンにメッセージを送れるようになる見込みで、これにより個別に警報システムを設置しなくても済むようになり、快適性と安全性も向上する。
1回の訪問で問題を解決するサーモテクノロジーのエンジニア:「HomeCom Pro」
ボッシュのオンラインポータル「HomeCom Pro」は、サービスエンジニアと顧客の空調システムを直接リンクさせ、空調システムの状態とすでに実施済みのサービス作業が一目で分かるように表示させることができる。そして故障が発生した場合、エンジニアはシステムの支援を受けながら問題の原因を探り、それにもとづいて修理内容を提案できる。
システムは空調システムの重要な全情報をサービス会社のPC、ノートPC、タブレット端末などのデバイスに送信可能。これにより、サーモテクノロジーのサービスエンジニアは実施すべき措置を事前に把握することができ、初回の訪問時に適切な交換部品を持参し、その場で修理できるようになる。
なお、このソリューションも「Bosch IoT Cloud」上で作動する。
「TrackMyTools」:私のドリルはどこ?
作業員が自分のコードレスドライバーを探し回る必要がなくなる。
ボッシュの「TrackMyTools」があれば、どこに工具があるかをいつでも確認できる。これにより、ワークフローがスムーズになり、時間の節約と生産性の向上につながる。
この「TrackMyTools」は、工具に小型のBluetoothモジュールを取り付けることにより機能する。同モジュールは、「TrackMyTools」アプリを起動しているスマートフォンやタブレット端末が半径30 m以内で受信できる信号を8秒毎に送信。この情報がモバイル機器から、当該機器に関する時間、ユーザー、最新の位置データといった詳細情報とともにクラウドに伝えられる。
もうひとつの利点は、ドリルやコードレスドライバーの所有者が、どこに自分の工具があり、どのように使用されているかというデータにウェブ上でいつでもアクセスできるということだ。また、所有者が作業員に個々の工具や機器をフレキシブルに割り当てることもできる。
2015年に発売されたこのシステムは、2016年に「Bosch IoT Cloud」に移行される予定。
【関連リンク】
・ボッシュ(Bosch)
・Deepfield Robotics
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