MediaTekは、オールビッグコアを採用した最新のモバイルチップ「Dimensity 9300」を発表した。
「Dimensity 9300」は、TSMCの第3世代4nmプロセスで製造され、最大3.25GHzの動作速度のArm Cortex-X4コアを4基と、最大2.0GHzで動作するCortex-A720コアを4基搭載したモバイルチップだ。
180HzのWQHDと最大120Hzの4Kに対応しているほか、折りたためるフォームファクタのデュアル・アクティブ・ディスプレイにも対応している。
5G R16モデムは、4CC-CAサブ6GHzおよび8CC-CA mmWaveに対応し、MediaTekのUltraSave 3.0+技術により電力効率を向上させている。
メモリは、現時点で利用可能な最高速度の「LPDDR5T 9600Mbps」メモリに対応している。
セキュリティ設計に関しては、起動時やセキュアなコンピューティング実行時に重要なプロセスを保護することで、データアクセスに対する物理的な攻撃を防御する。
Cortex-X4およびCortex-A720プロセッサは、Armの最新v9アーキテクチャに基づいて構築されており、同チップセットはArmのMemory Tagging Extension(MTE)技術に対応しているため、開発者は実装する前後で、メモリ関連のバグを発見することができる。
また、MediaTekのAPU 790 AIプロセッサは、「Dimensity 9300」に統合され、生成AIの性能とエネルギー効率を向上させる。APU 790は、整数および浮動小数点演算の性能を倍増させつつ、消費電力を45%削減する。
加えて、演算子を高速化するためにTransformerモデルを採用したことで、処理速度は前世代に比べて8倍高速化され、画像生成はStable Diffusionを活用することで1秒以内に完了することが可能だ。
MediaTekは、混合精度演算に対応したINT4量子化技術を開発しており、同社のNeuroPilotメモリハードウェア圧縮機能と組み合わせることで、メモリ帯域幅の利用効率を高め、大規模AIモデルのメモリ要件を削減することができる。
APU 790は、NeuroPilot Fusionに対応しており、低ランク適応(LoRA)を継続的に実行できるほか、1B、7B、13Bのパラメータ数を持つ大規模言語モデルに対応し、最大33Bまで拡張可能だ。
MediaTekのAIエコシステムの要素として、「Dimensity 9300」は、Meta Llama 2、Baichuan 2、Baidu AI LLMなどの大規模言語モデルに対応している。これにより、開発者はマルチモーダル生成AIアプリケーションを実装し、テキスト、画像、音楽などを対象にした生成AIアプリケーションをユーザに提供することができる。
さらに、「Dimensity 9300」は、Armの最新GPUであるImmortalis-G720を搭載しており、「Dimensity 9200」と同レベルの消費電力でありながら、GPUの性能は約46%向上している。また、「Dimensity 9300」を、同レベルの性能を持つ前世代のチップセットと比較すると、GPUの消費電力を40%削減している。
「Dimensity 9300」を搭載したスマートフォンは、同チップセットのCPU設計と、MediaTekの第2世代ハードウェア・レイトレーシング・エンジンを組み合わせることで、60FPSでコンソールレベルのグローバルイルミネーション効果を発揮する。
さらに、ゲームとビデオストリーミングを同時に楽しんだり、プレイ中に別のビデオを視聴するなどのマルチタスクが可能だ。
「Dimension 9300」のディスプレイシステムは、オンデバイスAI機能を活用することで、画像中の主要オブジェクトと背景をリアルタイムに検出する。
MiraVision PQ(画質)エンジンと組み合わせることで、主要オブジェクトの最適なコントラスト、シャープネス、カラーを動的に調整し、画像全体を強化して奥行き感を出すことができる。
接続性は、最大6.5GbpsのWi-Fi7速度に対応し、さらにMediaTek Xtra Range技術を統合することで、長距離接続を可能にする。なお、MediaTekのマルチリンク・ホットスポット技術により、競合ソリューションと比較して、「Dimensity 9300」はスマートフォンのテザリング速度も最大で3倍向上しているのだという。
今後は、「Dimensity 9300」チップセットを搭載した最初のスマートフォンを、2023年末までに発売する予定だ。
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