テキサス・インスツルメンツ(TI)、「スマート・ファクトリ・オートメーション・システムにおける制御レベルの設計課題」

この記事は、アメリカの半導体開発・製造企業 テキサスインスツルメンツ社が2016年5月に発表したブログの翻訳である。

インダストリ4.0向けに設計されるファクトリ・オートメーション(FA)・システムは、リアルタイム通信と制御を担う三つのレベルの装置を備えている。

・I/Oモジュールやアクチュエータ、ドライバが工場の実動作に使われる現場レベル

・PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)やCNC(コンピュータ・ニューメリカル・コントローラ)が現場レベルから情報を集め、コマンドを現場レベルへ発行する場所制御レベル

・HMIデバイスがオペレータと情報のやり取りをし、オペレータがコマンドを発行できるオペレータ・レベル

これらのレベルでは、それぞれに最適化されたハードウエアとソフトウエアのソリューションを必要とする設計上の課題がある。制御レベルに関する課題は、特に取り組むことが難しいとされている。

産業用オートメーションの設計に関する課題(消費電力、長い供給ライフサイクル、および信頼性の要件)に加え、この制御レベルの装置設計者は、一つのコントローラが対応できるノード数が増加していることから生じるいくつかの問題に直面する。対応できるノード数が増えることで、工場全体に渡るソリューションで、より安価な自動化ソリューションを創出するためにコントローラの数を減らしたり、あるいは自動化のレベルアップのためにより多くのノードが工場でサポートされたりしなければならない。しかし、サポートされるノードの数を増やすと、筐体を大きくせずにしかもプロセッサの消費電力を低く抑えたまま、性能を高めなければならない。さらに、ほとんどのPLCは、ファンを必要としない設計が施されているため、消費電力が重要な設計要素となっている。

工場内で多くのノードや機能を同時に制御しているPLCとCNCを使う場合、その作動のリアルタイム性が重要となる。二つのコンポーネント、つまりRTOS(リアル・タイム・オペレーティング・システム)と産業用通信向けの柔軟な時間管理機能を備えたペリフェラルがタイミング要件の厳しいソリューションに必要となる。

RTOSは、これらの装置が決定論的制御機能を備え、クリティカルなタイミング要件を満たすためにレイテンシを制御できるようにするために使われている。商用RTOSは、何年にもわたり、産業用制御アプリケーションで広く使われてきた。そして、それは産業用自動化アプリケーションに求められる時間管理機能と決定論的制御機能を追加する一方、Linux関連の大きなオープン・ソース・コミュニティという利点を持つRT Linux®ソリューションへの関心も集めている。

リアル・タイム・ソリューションの通信ペリフェラル部分に主に求められるのは、ノード数の増加が求められても、低レイテンシと短いプロトコル・サイクル時間を実現できるように産業用フィールドバスのプロトコルをサポートすることである。1つの設計から多数のフィールドバス標準をサポートしなければならないことを考慮すると、課題が一層複雑となる。

マルチ・プロトコルのサポートは、最終製品を多数の標準に準拠させるために必要である。EtherCATやPROFINET、Ethernet/IPなど多数の標準プロトコルが、一つの工場ですでに使われている。多数のプロトコルのサポートは、異なるボード設計が対応する各フィールドバスに求められるように、ASIC(ハードウエア)で解決するには複雑すぎる。それは、各プロトコルにはそれぞれ独自のASICが必要になるからである。フィールドバスのプロトコルをすべてソフトウエアやファームウエアで変更するという方法が取れるのであれば、これはそれほど大きな問題ではなくなる。

コントローラは複数のレベルで工場内のフィールドバス・ネットワーク、接続されたI/Oやアクチュエータ、ドライバ、あるいはその他のコントローラのバックプレーン、およびOPC UAのようなプロトコルを使う工場の診断事項のデータ収集用サーバと通信を行うため、このリアルタイム通信ソリューションを容易にするには、多数のペリフェラル・インタフェースが必要となる。このことすべて相まって、多数のペリフェラル・インタフェース、特にEthernetの必要性が高まり、フレキシブルでプログラム可能な通信ソリューションも求められてきている。

PLCとI/Oカード

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Sitara™ AM572x プロセッサ用の『TMDXIDK5728』産業用開発キット (IDK) は現在、制御レベルのFAソリューションを評価用提供している。AM572x デュアルコアARM® Cortex®-A15 プロセッサは、広い温度範囲の産業用アプリケーションに適しており、10万パワーオン時間という高い信頼性、リアル・タイム・ソフトウエア対応、プログラム可能な産業用通信に向いたデュアルのPRU-ICSS (Processor Real-Time Unit-Industrial Communication Subsystem)のような拡張性のあるペリフェラル・セットを持っている。

『TMDXIDK5728』は、Ethernet用に4ポート、すなわち2ポートのギガビット・スイッチ+2ポートのPRU-ICSS(デフォルト構成)か、あるいは4ポートのPRU-ICSSのいずれかを備えており、Processor-SDK-RTOSの上のPRU-ICSS-INDUSTRIAL-SWを通して供給されるAM57xに関する産業用フィールドバス・プロトコル向けにTIが新しくリリースしたソリューションを評価するのに使うことができる。さらに、『TMDXIDK5728』は、リアルタイムの産業用オートメーション・アプリケーションの開発用にTIの本流となるLinuxカーネル上でRTプリーンプト・パッチを最適化したProcessor-SDK-Linux-RTパッケージを作動させることができる。

ソース、画像提供:Texas Instruments Blog

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