PCにインストールするだけで、SOLIDWORKSと連動して使える無料のアドオンソフト

これまでミスミ部品のCADデータを入手するには、ミスミのWebカタログをブラウザ上で開く必要があった。さらにそこから商品選定→型番作成→CADデータの入手→ZIPファイルの解凍→インポート配置→保存といった作業が発生する。
1部品をCADに取り込むにあたり、およそ5分の時間がかかる。1設備あたり100個の部品が必要であれば、500分が設計とは直接関係のない時間に使われることになる。こうした非効率な作業の手間を削減し、設計者がより付加価値の高い設計・開発活動に専念できる環境をつくりたいという思いから、RAPiD Designは開発されたという。
「設計とは本来、創造的な仕事のはずです。ただ、実際には設計と直接関係のない作業に優秀なエンジニアの労力が割かれているのが現状です。私たちには、こうした状況を何とかしたいという思いがありました。ワンクリックで必要なデータがすぐ入手できる。そんな設計アプリを目指して、RAPiD Designを開発しました」(中川氏)。

設計者の困りごとで特に多いのは、設計変更に伴う「手間」だという。設計はいったん完了しても、さまざまな要因から図面の変更が生じる。そうすると、再びWebカタログを開き、CADデータをダウンロードしたらまたCADソフトに戻って保存・解凍、配置、保存という作業を、設計変更があった部品の数だけ繰り返さなければならない。
またこのとき、仕様変更に伴い部品表(発注表)も更新しなければならないが、更新漏れで誤発注が生じることもある。
設計変更におけるRAPiD Designの効果は明快だ。まず、1部品あたりにかかる時間はWebカタログを使うと5分。これに対してRAPiD Designを使うと、40秒に削減できる(▲86%)。Webカタログを開き、代替部品のCADデータをダウンロードして解凍……という手間が省けるからだ。SOLIDWORKS上で変更したい部品を選び、プルダウンで寸法などを変えるだけで変更が反映される(上の図)。
また重要なのは、部品表(発注表)のファイル名に型番の変更が自動反映されるため、誤発注の心配もなくなるということだ。中川氏は次のように言う。
「企業によってBOM(部品表)生成の手法はさまざまです。たとえば、SOLIDWORKS上のデータをエクセルにコピー&ペーストして部品表を作成しているお客様もいます。ただしこうした方法では、CAD内で仕様を変更しても、部品表の情報を更新し忘れてしまうことがあります。これが誤発注の原因となります。RAPiD DesignではCADデータの仕様変更が自動で型番に反映されるシステムとなっており、誤発注を防止することができます」
RAPiD Designは2018年8月に日本と中国を皮切りにリリース。その後も韓国、台湾、北米、欧州などで順次展開している。現在(2020年8月時点)グローバルで82,000人の利用者がいる。事例も続々と出てきており、たとえば日本電産マシナリー株式会社では、社内の業務改善調査で、ある1週間の設計業務時間を計測したところ、稼働5日で5.5時間の設計時間の削減を実現したという(※4)。

そして9月7日、RAPiD Designはフルリニューアルし、従来のミスミブランド部品に加え、SMCやTHKなど25メーカーの3DCADデータを初収録した。これで総部品点数は従来比9倍の450万点まで拡大。収録されたすべてのCADデータをSOLIDWORKSに直接インポートし、自由に設計変更することが可能となった。
これまで、各メーカーのCADデータを入手するには、次のようなプロセスが必要だった。まず、各メーカーのWebサイトを訪問してログイン。このとき、それぞれのメーカーごとにログインIDとパスワードの管理が必要だ。次に欲しい部品のCADデータをダウンロードし、ZIPファイルを解凍し、CADソフトにインポートする。そして設計変更時には、この作業を何度も繰り返さなければならない。

RAPiD Design最新版では、各メーカーのCADデータをRAPiD Designの画面からワンストップで入手可能。一覧から必要な部品をクリックすれば、立ち上げているSOLIDWORKS上に自動的にインポートされる(上の図)。
他メーカー部品データのワンストップ提供は、利用者からするとメリットが明確である分、いとも簡単に実現されたかのような印象を受ける。しかし技術的には、高いハードルがいくつもあったという。
「特に難しかったのが、膨大にある部品のCADデータと型番の紐付けです。CADを生成しているシステム側とカタログ上の商品の型番(ID)を合致させるには、非常に高い情報の精度が必要だからです。これについては各メーカー様のご協力と弊社の社員の努力により、ようやく実現にこぎつけることができました」(中川氏)。
RAPiD Design最新版によって、エンジニアは設計時間を大幅に削減することができるだろう。たとえば、「UV遮光ボックス」という装置を例にしてミスミが試算した結果によると、▲58%の時間削減が見込まれる(下の図)。

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※3 「RAPiD Design」のチュートリアル一覧はこちら。
※4 「RAPiD Design」の事例の詳細はこちら。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。