特集「DX KEYWORD TEST」では、DXで必須となるキーワードに関するテストを実施。
さらに、4枚の図を使って、サクッと解説します。今回のキーワードは「エッジコンピューティング」。全問正解目指してがんばってください!
解説編
ここからは、DX KEYWORD TESTの設問を図解していきます。
全部読んだら、再度問題にチャレンジしましょう!
増えるデータを、どこで処理する?

2000年代後半から、世界的にクラウドコンピューティングの普及が始まりました。(クラウドコンピューティングについての解説は「クラウド ーDXキーワードテスト」を参照してください。)
クラウドコンピューティングは、端的にいうと、サーバなどのITシステムをネットワーク経由で利用することです。
例えば、メールサービスのGmailやクラウドストレージサービスのBoxはクラウドサービスとして有名です。
みなさんの中でも、使ったことがある人は多いのではないでしょうか?
このクラウドコンピューティングは、インターネットを介して大量のデータが巨大なデータセンターに送信されており、そこでまとめて処理されるという点で「集中処理型」と言えます。
クラウドコンピューティングは、ハードウェアを運用することなく手軽にサービスを使えるため、便利ではあるのですが、必ずしもクラウドが良いというわけではありません。
その理由の1つに、以前と比べ、最近は扱うデータ量が増加している、ということがあります。パソコンやスマートフォンはもちろん、最近では家電、自動車、工場、ビルなど、世界中の様々なモノがネットワークにつながるようになりました。
その結果、総務省のデータによると、2016年にネットワークに接続されている端末は約173億台でしたが、2020年には約250億台まで増えているそうです。
ネットワークに接続する端末の増加によって、生成されるデータ量も増加したわけですが、このような大量のデータをクラウドで解析する場合に、いくつかの問題点が指摘されています。
まずは、通信の遅延です。例えば、工場でロボットや機械に囲まれて作業をする人が、危険なエリアに侵入したときに、機械の停止やアラートの送信を行うシステムをクラウドで開発したとします。
この場合、カメラの映像データをクラウドに転送して解析し、その結果、人の侵入があったか、なかったか、をデバイス側に送信するというようなやり取りが発生するため、多少のタイムラグが生まれてしまいます。
事故防止という観点では、多少のタイムラグも許容することはできません。
次に、ネットワークのコストです。ネットワークに接続するIoTデバイス1つ1つが、クラウドに送信するデータは小さくても、塵も積もれば山となるように、全体としては巨大なデータがデバイスとクラウドの間を行き来することになりますので、コストが高くなってしまいます。
セキュリティの問題もあります。収集したデータを、外部ネットワークを介してクラウドにアップロードする必要があるため、サイバー攻撃の標的になるリスクが高まります。
エッジコンピューティングの仕組みとメリット

「集中処理型」のクラウドコンピューティングならではのメリットもたくさんありますが、その普及に伴って、さきほど述べたような問題も指摘されるようになりました。
そこで、登場したのが、エッジコンピューティング(Edge Computing)という「分散処理型」のモデルです。
「Edge」は日本語に訳すと「端」という意味になります。「端」とは、ネットワークの末端に接続されているような、スマートフォンやIoTデバイスなどの端末のことを指します。
端末の近くに配置されたサーバもエッジと呼ばれることがあります。
さて、クラウドコンピューティングの場合は、デバイスから直接クラウドへ全てのデータを集約し、クラウドでデータを処理していました。
一方、エッジコンピューティングの場合は、その端末自体や端末の近くにあるサーバで、データ処理を行い、蓄積や管理の必要のあるデータのみをクラウドに送信します。
メリットとしては、低遅延、通信コストの削減、セキュリティ強化が挙げられます。
まず、クラウドにデータ転送して、処理結果を待つ時間が省けるため、タイムラグが少なく、リアルタイム性が高いです。(低遅延)
次に、クラウドに全てのデータをアップロードするわけではないので、データの通信量が削減でき、通信コストも抑えることができるでしょう。(通信コストの削減)
さらに、端末や端末の近くにあるサーバで、匿名加工などのデータ処理を行って、プライバシーリスクのない情報にした後で、クラウドに送信するといったことも可能です。そのため、データ漏えいしたとしても、ダメージを最小化することができます。(セキュリティ強化)
ここまで聞くと、だったらクラウドではなくエッジにしよう!と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それなりに高速でデータ処理が行える端末をたくさん用意しようとするのは予算の面から現実的ではないということも有り得ます。
なので、通信頻度や1回あたりの通信容量はどのくらいなのか、データの機密性は高いのか、どの程度の遅延ならば許容できるのか、といった観点から、クラウドコンピューティングかエッジコンピューティングどちらのデータ処理方法がよいのかを選択するのが良いでしょう。
エッジコンピューティングが活躍するときって、どんなとき?

エッジコンピューティングには、低遅延、通信コストの削減、セキュリティ強化の3つのメリットがあると説明しましたが、このようなメリットが活きてくるシーンとはどんなものでしょうか。
よく例として出てくるものが、自動運転車です。自動運転車はセンサーの塊です。インテルによると、自動運転車が1分で集めるデータは約50ギガバイトあるそうです。この大量のデータをクラウドに送り、そこで処理した結果を自動運転車にフィードバックする、ということをやっていては通信時間による遅延が発生してしまいます。
なので、突然、自動運転の前に子どもが飛び出してきたとき、クラウドでデータ処理していたのでは、ブレーキが間に合わない可能性があります。遅延がたとえ数ミリ秒であったとしても、そのわずかなタイムラグが子どもや乗客の命を奪うことにもなりかねません。このようなわずかな遅延も許容できないような用途においては、エッジコンピューティングによるデータ処理が適切であると言えます。
他には、スーパーやコンビニなどでの来店客の行動分析があります。店舗に取り付けられた防犯カメラから、店内を移動する来店客の映像を入手し、それを行動分析に利用することができそうです。
ただ、1日にお店に訪れるお客さんの数を考えると、このままの映像をクラウドに送るのはデータ量が膨大になってしまい、通信コストが上がってしまいます。
しかし、防犯カメラが捉えているものすべてが行動分析に必要かというと、そうではありません。その人物がどんな商品を手に取っているのか、お店の中をどう動いているのかということを知りたいので、人物の衣服だとか、表情はなくてもよいわけです。
そこで、防犯カメラの映像を、店舗内のコンピュータに処理させて、人物の位置を座標に置き換えます。そうすると、クラウドに送るデータは座標情報のみになりますので、映像をそのまま送るよりも、かなり圧縮された状態で送ることができます。
これにより、通信コストを最低限に抑えることも出来ますし、来店客の顔といった個人情報も外部ネットワークにアップロードする必要はなくなるため、セキュリティ強化にもつながります。
エッジコンピューティングの活用事例、北洋銀行

北洋銀行では、エッジAIカメラを活用し、新型コロナウィルス感染症対策の給付金や助成金に関連した詐欺や振り込め詐欺を未然に防ぐソリューションを導入しています。
エッジAIカメラは、人物の骨格推定によって、電話をかけながらATMを操作している人物、電話をかけながら順番を待っている人物を検出し、銀行内の職員に通知を飛ばします。
職員はその状況に応じて適切な声がけを行うことで、詐欺を未然に防ぎます。
エッジAIカメラは録画映像をサーバに送信することなく、カメラ内のAIにて分析を行うため、プライバシー情報の漏洩の危険性が少なくなるといわれています。
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