【前編】政治家 小林史明氏が語るテクノロジー実装社会、IoT・AIで「ヒト起点の政策」をつくる

あとは、高齢になっても働くことのモチベーションを維持できるしくみが重要です。いまの制度だと、収入がある分、年金が減るのです。これでは、働こうと思いませんよね。長く働ける人、意欲のある人が自由に生き方を選べるようなしくみをつくり、きちんと国民に知らせていくことが大切なのです。

小泉: 社会を支える人がたくさんいると、将来に対する不安は減ります。そうすると、出生率は上がり、働き手も増えて、いい循環ができますね。とても素晴らしい政策だと思います。

小林: そうした政策を実現するためにクリアすべき最低条件が、テクノロジーを社会実装していくことだと考えています。

「地方分権」には、ITシステムの「標準化」が必要だ

小泉: いま、とくに注力している領域はありますか。

小林: 「標準化」に力を入れています。さきほどお伝えしましたとおり、全国の自治体は、それぞれが別々にシステムを調達しています。それは経費の無駄でもあるし、そこで働いている職員さんの手間にもなります。

自治体の職員が向き合うべきは、住民サービスです。しかし、人口がますます減っていくと、住民サービスを担う職員さんの数も減っていきます。ですから、少ない人数でもできるように、標準化が必要なのです。

また、国はいま「働き方改革」を民間に求めています。ところが、その足を引っ張っているのはむしろ行政です。そこを、行政がリードするような体制にするには、標準化が必要だと考えています。

わかりやすい事例が、書類手続きです。たとえば、企業に勤める社員が保育所を利用する際には、会社がその証明書を自治体に提出しなければなりません。実はそれが、すべての自治体でフォーマットが異なるのです。

ですから、一部上場企業で全国に支店があるような場合には、企業の担当者がその証明書をすべて手書きしないといけません。実際に、上場企業では、労務担当者が手書きに平均88時間を費やしているというデータがあります。

そうしたフォーマットを標準化できれば、さまざまなテクノロジーとAPIで連携できるようになっていきます。ですから、標準化はテクノロジーの実装において最初にクリアすべきステップなのです。

小泉: 最近、エストニアの「電子政府」の取り組みが注目を集めています。ITシステムの標準化が進み、国民は自治体での手続きの大半を、インターネットを使ってできるようです。それと同じような方向性でしょうか。

小林: はい。そういう意味では、私たちも「電子政府」のような取り組みは色々と進めてきたのですが、構造的な問題が障壁となっていました。そもそも、自治体ごとに業務のやり方や書式が違うということに、手が入ってなかったのです。

それは、「中央集権」と「地方分権」のどちらがいいかという議論があった中で、分権が美しいということで、整理されてきた結果です。しかし、システムに関しては話が違います。システムは分権/集権ということではなく、標準的にすることが大事なのです。

小泉: レイヤーが違いますね。

小林: はい、レイヤーが違います。いわゆるアプリケーションのレイヤーは分権すればいいのですが、インフラの部分は標準化した方がいいのです。

次ページ:「平成30年7月豪雨」で浮き彫りになった「標準化」の必要性

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