内田洋行ビジネスITフェア2024

KDDIがエコモットと共同でプロデュースするIoTプラットフォームFASTIO −KDDI 安田氏、エコモット 入澤氏インタビュー

KDDI株式会社 ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 企画1グループ 課長補佐 安田篤史氏と、IoT/M2M モバイルクラウドソリューションを提供するエコモット株式会社 代表取締役社長 入澤 拓也氏に、KDDIが提供するIoTプラットフォームのお話を伺った。

 
-今回リリースされたKDDIのIoTプラットフォームサービスについて教えてください。

KDDI 安田氏(以下、安田): こういったクラウドのプラットフォームというのはすでに数多く出ています。

例えばFA業界だけに向けたプラットフォームもありますが、われわれの場合は、KDDIがキャリアなのでユーザーを選べません。誰でもどうぞ使って下さいというようなものに、サービスを仕立てる必要があります。

通常クラウドでできる事というと、
1.センサーからのデータを蓄積して保存しとくというデータの保存
2.画面で保存したデータをグラフとかきれいな形での見える化
3.しきい値を設定してそれに対してアラートを発報

この3つの機能というのは、どこのクラウドも備えてるものでして、われわれもそれを備えていますし、特にその面では大差はないといえます。

あとは若干のUIの違いですとか値段の違いとかになるのですが、われわれとしてはそれだけではちょっと面白くないねという事もあり、エコモットさんと組んで、お客様の業務にも入り込んでいろんなカスタマイズを提供しようと考えました。

カスタマイズすると「時間もかかってできない」とか、「できてもお金と期間がかかる」という課題がありますが、当社のIoTプラットフォームの基盤である、「FASTIO」の仕組みがカスタマイズに向いていて、画面もPHPでホームページを作るようなイメージでできるとか、非常に柔軟にできているところがあって、お互いの強みを生かしながら、本当にお客さまから選ばれるクラウドサービスを世に出していこう、というような経緯で協業をスタートさせました。

エコモット 入澤氏(以下、入澤): まだ始めて1ヶ月くらいなのですよ。KDDIさんにこういう事やりましょうと言っていて、僕としては3年越しでしたが、「MCPCでFASTIOがグランプリも獲ったので、改めてどうですか?」という話題が上った時に、ようやく実りました。

【参考:MCPC AWARD 2015

僕らが何故KDDIとやりたかったかというと、やっぱりクラウドをやる時にキャリアのネームバリューがすごく大事なのです。どこかの自治体にうちのクラウドサービスやりましょうと言っても、「おたく誰だ?」となるわけですよ。

でもKDDIですって言ったらそれだけでもういいですし、通信料とクラウドとセットでできるので、僕らもすごく売りやすいというのもあります。僕らだけじゃなくて、当然SIerさん、KDDIの代理店さんなど、多くの方がいます。それで、われわれのFASTIOをあえてKDDIブランドとして頂いて、僕らがそれを売るという構図となりました。

もう一つは、これからとにかくIoTこれからやろうよっていう時に、何から始めていいか分からないという場合があります。例えば、カメラを付けたいと言っても、どのカメラ選んでどうしたらいいか分からない。こういった問題も、クラウドと回線とカメラを全部セットにして、しかもレンタルスキームも導入して、初期費用0円、月額29,800円という値付けが可能となりました。

auインタビュー
左:エコモット株式会社 代表取締役社長 入澤 拓也氏/右:
KDDI株式会社 ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 企画1グループ 課長補佐 安田篤史氏

 
-通信費はどうされてるのですか?

安田: 基本的にはクラウドと通信費は別になっています。ただ今回はエコモットをサービサーに立てることで、パッケージ化して、全部を一緒に提供できるようにしました。

今まではセンサーを買う、クラウドを契約する、回線も契約するというような形だったのですけれども、それを全部1つの申込書で全て利用できて、しかも届いたら難しい設定などもしないで直ぐに使えるのが特徴です。

 
-つまり通信もエコモットにKDDIは売っているわけですよね?

安田: そうです。

 
-IoTらしいお取引ですね。

安田: 本当はKDDIがそこまで全部できればいいのですが、やっぱりモノの管理、例えば工事の手配、保守など、われわれの範囲を超えていることも多く、ちょっと難しいのです。

そうすると、エコモットのようなサービサーが立ってくると、工事もモノも通信も全部まとめる事ができます。

結局ユーザーというのは煩わしいのをやりたくない、あちこちに発注して、しかもキッティングして自分で設定して。もし壊れたらこの場合は複数の連絡先に連絡する、そういった事が非常に煩わしいというのがあって、それが導入の障壁にもなっていました。

それで、今回こういったパッケージというのをやりたかったので、エコモットからクラウドの技術を提供してもらい構築したクラウドサービスと、KDDIの回線をエコモットに卸して、パッケージにしてもらってるという、非常に複雑なスキーム となっています。

 
-なるほど。価格帯も企業が導入する金額としては手頃ですね。

安田: そうですね。今までIoTクラウドサービスというと、大きな企業が自分のサービスを決めて、お見積りはいくら?というアプローチが多かったのです。

ただそうすると、大企業しかターゲットにならなくて。われわれもっとIoTというのを広めていきたい上では、やっぱり中小企業でも簡単に「ああ、いいね。」じゃあAmazon.comで、ワンクリックして買うような感覚で何か提供できないかなと常々思っていました。

今回いい機会なので、こういった形でコストが安く簡単に、ダンボール開けたらすぐ使えますというのをコンセプトで、“かんたんパッケージ ”という名前で出しました。

auインタビュー

 
-「Entryプラン」はPoCをイメージされているのでしょうか。

安田: そうですね、結果そうなりました。今まで小さなものから大きな案件まで全てやっていこうと思っていたのですが、料金も安いことから実際のお客様はPOCで使ってみるというところで、ご利用いただいています。

 
-なるほど。「Standardプラン」と「Entryプラン」の違いというのはどこでしょうか。

安田: 大きな違いがインターネットを開放し、他社の回線もつかっていただいてよいという事ですね。ユーザーからするとインターネットでセンサーの情報をサーバーに登録というのは当たり前の事なのですけれど、われわれキャリアからするとちょっと古い考えがありまして、クラウドだけじゃなくて回線も使って欲しい、auを使って欲しいところです。

お客さまの立場に立つと本当は、
「今設備がFOMAなんだよ。でもクラウドがいいから使ってみたい。」
「いやいやダメです。端末を買い換えてください、auに買い換えてください。」
「そこまで投資できないね。」
など様々なしがらみがでてしまい、他キャリアを使わないといけないということもあるのです。

キャリア都合でそういったような構成で出すというのは、もう時代に合わないというのがあって、今回思い切ってインターネットでもいいですとしました。そうすると結果的にキャリアは選ばない、固定回線でもいい、海外からでもデータは来るし、お客様としては非常に使い勝手があがる、そういった形で結果的に良かったです。

 
-つまり、通信キャリアに縛られずクラウドだけを利用できるサービスだということですか?

安田: そうです。あと、ちょっと今回の特徴は、FASTIOにもない機能として、この画像ですね、画像扱うような機能を盛り込んで頂きました。

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入澤: クラウド録画ですね。

安田: こういったカメラ画像をクラウドに預けて見るっていうのは、ある意味枯れたもので、特に新しいことでもないのですけれど、何が特徴かというと、回線のないような所、例えば工事現場とかイベント会場とか、そういったモバイル通信が得意な所に最適化されたパッケージなのです。つまりスマートフォンとかもそうなのですけれど、7GB制限って月にあって、それを超えるとスピードが128kbpsに落ちるというもの。

なので、スマートフォンで送ろうとすると3日か4日動画を流すと制限にどうしても引っかかってしまうのですね。それを今回モーションJPEGというパラパラ漫画にして軽い静止画を1秒に1回送るようにしました。それをクラウドで繋げて動画にするという事で、これらの制限をクリアしました。つまりどこでも24時間365日動画が撮れる、そこが大きな特徴です。

 
-なるほど、面白いですね。そんな事もされてるのですね。

安田: そうなのです。これも全部エコモットさんの技術です。

入澤: ローカル保存からクラウド保存というのは、トレンドとしてはこれから間違いないと思っています。

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エコモット株式会社 代表取締役社長 入澤 拓也氏

 
-そうですね、グルーバルレベルで見た時に、監視カメラがもうクラウドなのですよね。みなさんが出されているのは、有線だったりWi-Fiだったりすると思うので、あまりキャリアのネットワークという意識がないですよね。IoTというとローパワーやローコストの方にどうしても行きがちなので、リッチなデータ送る事にはならないじゃないですか。そういう意味でやり方が面白いですね。これから2020年に向けて、いろんな所に付けたいですよね。

安田: まさに2020年へ向けてお問い合わせが多くなっています。今商店街や自治体などで付けているカメラは、実はネットワーク化されていないそうです。何か事件が起きたら、ある意味ハシゴつけて登ってSDカード抜いて探すというような事していると聞いています。

そういうのをもっと簡単にするためにわれわれのようなものを使うと、たった月額29,800円で、しかも遠隔地 のいろいろなカメラを見ることができます。

われわれが想定していなかった、既存の置き換えというお問い合わせもあって、意外と予想外の反響があったなと思います。

 
-いっぱい入る前提でいくと、顔認識技術がすごく上がってて、付け髭つけたぐらいじゃ本人と特定できるじゃないですか。それでいろんな都市をつないでくれたりすると、こっちで万引きした人がこっちで捕まるということもできますね。

安田: 確かにそれはありますね。

結局「クラウドこんな機能があります。どうですか?このクラウド使ってみませんか?」と言っても、やっぱりみんなピンとこないのですよね。データもたまるし、閾値こえたとか、アラートだとか、見える化だと言うのですが、それだけだとどうも進まなくて。

具体的に見せて、カメラだったら例えばこういうふうにすると、こういう事ができるでしょ、防犯ができるでしょとかいろいろな具体例を出すと、そこからヒントを得て、「じゃあうちの業務だったら」となるのですね。よって最終的な使い方まで提案してあげないと、なかなか見えない商材というのは難しいなと思います。

 
-すぐ始められるサービスの中で、安い高いの話や、結局何がいいのかというのが言えるか言えないかの差はすごく大きいのですよね。

安田: そうです。この言葉がいいか分からないのですけれど、同じクラウドでももうちょっと尖ったクラウドにもしていきたいなと思っています。

 
-ここはやっぱりAIなんだと思います。AIと他クラウドとのデータ連携ですね。どれだけのデータを連携して複雑な事ができているかとか、逆に自分のデータを売ったり買ったりできるかみたいな事だったりとか、そういう事ができてるかがポイントではないかと思います。 

安田: 分かります。おっしゃる通りだと思います。

いろんなプラットフォームが、いわゆるAPI的なものがあって、お客さんが何かやりたい事に対して、これとこれとこれって組み合わせ自分でできるようなものが、本当のIoTだと思うのですね。

でもわれわれはまだまだIoTって言葉だけが先行していて、なんとなく「うーん、じゃあIoTクラウドでいこうか。」みたいなそんな話なのですけれど、実際はまだまだ全然IoTクラウドじゃなくて、やっぱりまだまだこれでもIoTの手前の“M2M” クラウドなのですよ。

そこで、この先としては、このM2MクラウドというのはIoTの中のまだ1パーツなので、こういったものをAPI化して誰でも使える。他には例えば請求プラットフォームであったり、ソラコムのようなSIMの管理だとか、全部そういうの含めて開放していく。そうしないとダメかなと思っています。しかし、キャリアはそこに矛盾があって、解放するのは怖いという気持ちもあったりするので、そこをどう1歩踏み出すかが大事だと考えています。

今回の事でも、インターネット開放したというのは、社内ではすごくいろいろありました。

「何の為にやるのだ?」とか、「クラウドだけ売ったって意味ないぞ。すぐ乗り換えられたら、意味ないじゃないか。」とか、「やっぱり回線とクラウドをセットで持っておくから強いのだ。」とか、「われわれの商売は、なんやかんや言っても回線ビジネスだろ。」とか・・・。

クラウドはどっちかというと、付帯ビジネス的なイメージなのだけれども、「いや、そうじゃないのだ。」と。「そういう考え方だったら、もう使われないよ、そもそも機能とかの前に。」という話で若干押し切っちゃったってとこあって。ただその結果、市場の反応がすごく良かったので、こういう動きしていかないとダメだと思いますよね。

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KDDI株式会社 ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 企画1グループ 課長補佐 安田篤史氏

 
-なるほど。本日はありがとうございました。

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