IoTプラットフォーム、ソラコムのカンファレンスでIoTとテレマティクスについてのパネルディスカションがあった。
トヨタ自動車株式会社 e-TOYOTA部 部長 藤原 靖久 氏
JapanTaxi株式会社 代表取締役社長 川鍋 一朗 氏
株式会社ガリバーインターナショナル 執行役員 CIO 許 哲 氏モデレータ:
膳場 貴子 氏
株式会社ソラコム 代表取締役社長 玉川 憲 氏
トヨタ自動車 藤原氏
トヨタのテレマティクスの取り組みは、2002年G-BOOKサービス発表というところからスタートした。これはWindowsCEをクルマにのせるという意欲的な取り組みだった。様々なサービスが発表され、現在ではレクサスで、エアバックスがはぜると緊急連絡が発砲されるというサービスが残っているということだ。
トヨタは現在、カーナビと通信機を連携し、スマートセンターとつなぐというサービスを行っている。地図情報を連携したり、オペレーションサービスや、エアバッグ連動、盗難車両追跡、リモートメンテナンス、高度運転支援サービス(2020〜)といった取り組みが行われているということだ。
次世代のテレマティクスでは、スマートフォン、IoTとの接続、ビッグデータの活用を検討していて、これまで専用線網ですべてのサービスを展開していたが、これからはインターネット網も活用したサービスを想定しているということだ。クルマやのサービス、スマートフォンや家電といった様々なモノとの接続を考えていきたいということだ。
Japan Taxi 川鍋氏
Japan Taxiでは、全国タクシーというサービスを行っている。タクシーのネットワークを全国につないで、スマートフォンでタクシーを配車できるサービスだ。
現在、車内のモニターで広告を見るとポカリスエットがもらえるキャンペーンを現在実行しているが、動画自体はSDカードで付け替えていることだ。ここをインターネット網をつかって、動画を配信しようという考え方に興味があるということだ。他にも、広告企業のフリークアウト社とも提供し、位置情報にも応じた情報をモニターに流していきたいうことだ。
仮にSORACOM Airを利用した場合、1つの動画を1台にダウンロードするのも6円程度ということで、実際にこういった広告事業をやるのに必須な通信費の低減が図れることがすごいのではないかと述べた。
実は、タクシーは、車内に様々なモノがついていてデータを収集しているのだが、それぞれのモノはすべて車庫に帰ってきて初めてデータを読むことができる。しかし本当は走行中に知りたい情報が多いので、様々な機器を一つにつないでしまいたいと考えたが、全部つなげるという考え方だと10年はかかる。そこで、使いたいモノにだけ通信できるようにしていきたいという発想に切り替えたということだ。
例えば、車載カメラにSIMを搭載することで、衝突した際の情報を取得することができるようになるので、衝突というトリガーで様々な対応を行うことができるというのだ。
ガリバーインターナショナル 許氏
現在、日本の登録しているクルマのデータベース化を進めている。ガリバーインターナショナルは、現在の小売流通から、モビリティエンタテイメント、「移動をもっと楽しくするプラットフォーム」の企業として成長したいと考えているということだ。
具体的には、クルマにSIMをつけて、インターネットにつないで、ゲームやエンタテイメントコンテンツのプラットフォームを構築したいと述べた。
パートナーとしてSORACOMを検討している理由
ここからは、アナウンサーの膳場氏と、ソラコムの玉川氏をモデレータとして、パネルディスカションが行われた。
膳場氏:パートナーとしてソラコムを検討している理由はどういうところですか
トヨタ 藤原氏:もともとeトヨタはベンチャーだった。インターネットのやり方を取り入れないと、クルマはただの箱物になってしまうのではないかと考えている。
Japan Taxi 川鍋氏:タクシーの中で画像の通信をやろうとすると、画像データ量の可変性があるという点で基本料金が安く変動するのがよいと思う。また、ソラコムと仕事をやるというと、社内のエンジニアがわきたつ。エンジニアドリブンのやり方をするにはこういうことも重要だ。
ガリバー 許氏:ガリバーは、社内システムをAWSに早い段階で移行しているが、それも玉川氏との出会いがきっかけだ。IoTについては、テクノロジーの部分はソラコムに任せていけば、事業に専念できるというところが大きなポイントだと思う。
膳場氏:グローバル展開についてどうお考えですか。
トヨタ 藤原氏: 事故になりそうなことを事前に防止するということが当たり前になる。繋がらないクルマが走るのはもう危ないだろうという時代がやってくる。そういう時代では、すべてのクルマに通信機が搭載され、安全な走行を行うべきだ。そういったとき、ソフトウエアで通信の質を高めていくというサービスでないと間に合わない。
ソラコム 玉川氏:5年前にはクラウドなんてありえないといわれていたが、今や常識になっている。通信も今後そうなると考えている。
ガリバー 許氏: 日本から約120万台の中古車が海外に輸出されている。現在、ニュージーランドに直営店を構え、インターネットを通して購入するという仕組みも実現している。これからは、すべてのクルマについて追跡することができる(購入前の利用者情報や、事故情報、など様々な情報を取得した上で中古車を買うことができる)ので、データとして安心なクルマを購入するという時代がやってくるはずだ。
日本の良質な中古車が世界に出る中で、こういった可視化の仕組みが活躍するはずだと考えている。
膳場氏:Japan Taxi川鍋氏は、UBERを迎え撃つ立場としてはどうか。
Japan Taxi 川鍋氏: サービスには際限がないが、日本のサービスクオリティはUBERを受けたつことができると考える。UBERの場合、相互認定(利用者がドライバーを、ドライバーが利用者を評価するシステム)で、現在はサービスのレベルを担保されているが、それ以上のサービスとなると、レイティングだけでは対応できないと考えている。それで、当社としてはプロの運転手として、サービスレベルの高さをキープできるための取り組みを進めている。ヒトは見られているとサービスが向上するので、SORACOMをつかって、リアルタイム、ランダムにサービスクオリティをチェックするサービスができないかと考えている。これは海外(特にインド)でも利用しようと考えている。
膳場氏:つながるクルマの未来についてどう考えているか。
トヨタ 藤原氏:つながらないクルマは未来には存在しないのではないかと考えている。見守られているという感覚を受けるクルマ作りが重要だと考えている。
ガリバー 許氏:今現在乗っている人たちが、つながった環境を享受できるデバイス、サービスをクルマにいれたい。
Japan Taxi 川鍋氏:田舎暮らしを東京暮らしにいれたいという生き方を考えている。自動運転が取り入れられれば、東京でがんばらなくても田舎暮らしも実現できると考えている。そういうデュアルライフを実現したいと考えている。
ソラコム 玉川氏:つながったときにのサービスを考えると、そのためのインフラをつくらなければならない。非常識なスピード感でサービス展開・グローバル展開を行いたいと考えている。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。