スマートファクトリーとは、ドイツ政府が提唱するインダストリー4.0の中で表現されているような、工場内の機器がインターネットに接続され、様々なシステムとつながることで、可視化や最適化を行うことができる工場のことだ。
スマートファクトリーを実現させるためには、様々なソリューションが必要になる。
本記事では、3DCADに着目する。
スマートファクトリーに3DCADがなぜ必要か
国内では、製造業の設計・開発・製造・保守のプロセスにおいて、それぞれのプロセス単位でのデジタル化の取り組みが進んでいる。
一方、欧米諸国では、設計から保守までのデータをなるべく統合管理していこうという動きがある。
これは、わずか3年で市販車を作ったe.GOの事例にも代表されるように、昨今の製造では設計フェーズで作られた3DCADのデータに、物理特性や制御プログラムを全て取り込み、開発フェーズで行う耐久テストなどのテストをデジタル空間上で行うことで、開発期間の短縮を図るというものだ。

また、工場においても、デジタル空間上に工場に配置される産業機械の3DCADデータとその制御プログラムがあれば、実際に稼働したときの、日当たりの生産数がかなり正確に予測できたり、中間生産物をAGVなどで輸送する際も人の動線と当たらないか、作業台は作業をするスペースとして適切か、など、本来工場ができてからしか確認できないようなことも事前に確認することができるのだ。
さらに、昨今新しい製造として、3Dプリンターを使用や、ジェネレーティブデザインの活用というテーマがある。
こういった新しい取り組みの際にも3DCADでの設計データが必要になる。
以下、グローバルで利用されている3つの3DCADソフトを紹介する。
NX
NXはシーメンスPLMソフトウェアが開発する3DCADだ。
CADのみではなく、CAEやCAMの機能もあり、機能ごとでデータ交換が不要である。
日本国内では、マツダ株式会社や日産自動車株式会社などで使われている。
[参考記事]
シーメンスPLMソフトウエアの、デジタルインダストリーへの戦略
CATIA
CATIはダッソー・システムズが開発する3DCADだ。
元々はダッソー・アビアシオン社の製品である航空機の設計を行うために開発されてきた。現在では、国内外ともに多くの自動車メーカーや重工業メーカーで使用されている。
日本国内では、トヨタ自動車株式会社や本田技研工業株式会社で使われている。
[参考記事]
ダッソーが目指す製造業の全体最適、連続的なデジタル空間で加速
Creo
公式ページ
CreoはPTCが開発する3DCADだ。
最新版であるCreo6.0ではAR機能が追加され、全てのライセンスでクラウドベースのARが利用できる。この機能によって、設計情報の共有や、同僚、サプライヤー、顧客、製造委託先との安全な共同作業が可能になる。
日本国内では、シャープ株式会社やソニー株式会社で使われている。
[参考記事]
デジタルの糸が紡ぐ、スマートファクトリーの未来 ーPTC LIVEWORX2019レポート1
本記事で取り上げた3つの3DCADに共通するのは、開発している会社がプラットフォームも開発しているということだ。
単純に3Dモデルを作成するだけではなく、プラットフォームを通じて様々なアプリケーションやデータと連携をすることで、スマートファクトリーを作ることに貢献するだろう。
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大学卒業後、メーカーに勤務。生産技術職として新規ラインの立ち上げや、工場内のカイゼン業務に携わる。2019年7月に入社し、製造業を中心としたIoTの可能性について探求中。