AIoT のパワーを解き放て―― AIとIoTを統合したAIoTを今すぐ導入すべき理由とは?

どうする?日本の製造業  ーIoTConference2017レポート③

2017年7月7日(金)、昨年と同じ大崎ブライトコアホールにて、IoTNEWSが主催する「IoTConference2017 スマートファクトリーの今と未来」が開催された。

今年は、製造業にフォーカスをあてたカンファレンスだ。

製造業のIoTに関して多くの方が知りたい、「他社は、何をやっているのか?」「どういうコンセプトでまとめていくべきなのか」「実際に取り組んだ際の、課題は何だったのか、どう解消したのか?」にフォーカスを当てて今のIoT界を牽引する登壇者が、スマートファクトリーの今と未来について語った。

登壇者:

  • 株式会社ウフル 専務執行役員 IoTイノベーションセンター所長 兼 エクゼクティブコンサルタント 八子 知礼 氏
  • ベッコフオートメーション株式会社 代表取締役社長 川野 俊充 氏
  • IDC Japan株式会社 Worldwide IoT Team 鳥巣 悠太 氏
  •  

    モデレータ:

  • IoTNEWS代表 小泉 耕二
  • 小泉:
    早速ですが、八子さんは、本日午前中に行われた、経済産業省の長谷川さんの基調講演、IDC Japan株式会社の鳥巣さんの講演を聞いて、どんな感想を持たれましたか。

    株式会社ウフル 専務執行役員 IoTイノベーションセンター所長 兼 エクゼクティブコンサルタント 八子 知礼 氏

    八子氏:
    長谷川さんの基調講演では、コネクティッド・インダストリーは、製造業だけでない領域まで拡大して来た、という覚悟が感じられましたね。

    そして、鳥巣さんからご紹介頂いた話は、まさに、こうしたことを技術でどう補完するのかということで、具体的なソリューションを解説されていましたね。「IoTや産業単体でなく、それらが完全に融合したら新しいビジネスが生まれます」というところを解説して頂いたと考えておりました。

    小泉:
    ありがとうございます。川野さんは、どのようなご感想でしたか。

    ベッコフオートメーション株式会社 代表取締役社長 川野 俊充 氏

    川野氏:
    長谷川さんからは、業界とか業種をまたいでいく前提で、物事を考えていく方向に、国が大きく舵をきって、色々なインフラを整えていっている、という状況が感じられました。

    鳥巣さんのお話では、PoCが実際のビジネスにロールアップしていく時に一番大事なのが、経営者の意識改革だという件(くだり)があったと思うのですが、私も実際、日々の案件でお客様とやっていく中で感じるところでした。

    色々PoCやりましょうという話があるのですが、PoCが上手くいくケースというのは、経営者がやりたくてしょうがなくて、絶対にものにして、自分たちだけでなく外販するビジネスにしていくような場合ですね。非常に前のめりな経営者とやっていくと、引きずられる形で、一緒に走っていって、世の中に成果という形で出てきます。

    逆に、ベンダーから「IoTやりましょう」という形で、窓口となる担当者に、「上に決済を貰ってください」と上げていっても中々上手くいかないことが多いです。

    もちろん、こうしたボトムアップ型のアプローチもあきらめてはいけません。しかし、今のモーメンタムでいうと、事業の新しい柱として、IoTの分野とか、第4次産業革命を自分の手で起こすんだという個人の思いで切り開かれていく性質があるのではないかと感じています。

    小泉:
    ありがとうございました。八子さんは、色々な会社でコンサルティングをやってこられてきたと思いますが、経営者のやる気が感じられない時、どう働きかけていらっしゃいますか?

    八子氏:
    経営者に対しては、成功事例をもっていくだけでは中々動かないので、恐怖シナリオを出します。

    さらに、ある程度、情報を共有しても、何も動かなければ放置します。そして「競合になるような会社に話を持っていくぞ」と話します。「御社ではやられないので、いいですよね」と。そしたら、恐怖シナリオに基づいてこういう悪いことが起こりますよという感じです。

    脅しているわけではないのですが、本当に危機意識がないと経営者レベルでまず動かないですからね。

    小泉:
    ありがとうございます。今度は鳥巣さんに、質問したいと思います。これまでも様々なデータが表しているように、どう考えても危機意識を持たなくてはならないところに既に来ていると思います。しかし、それでも危機意識がない人たちには、どういう言い方をしたらいいでしょうか。

    IDC Japan株式会社 Worldwide IoT Team 鳥巣 悠太 氏

    鳥巣氏:
    私はよくサッカーのチームを例えに出します。

    40年前のサッカーは、オフェンスとディフェンスが、機能分離していました。つまり、守る人は守るだけ、攻める人は攻めるだけといった具合です。ところが、今のサッカーは全員で攻めて、全員で守るというトータルフットボールが当たり前となっています。

    成功する企業かどうかは、トータル・フットボールが出来ているか出来てないかだと思います。例えば、長友という選手は、元々ディフェンスの選手でしたが、オフェンスにも出て点をとります。企業に例えると、IT部門に所属しているのですが、積極的に事業分野にも手を出して利益を生む、オールマイティな人材ですね。

    しかし、企業組織内に長友のようなスーパースターがいても、40年前のサッカーと同じよう組織がダメ、監督がダメなケースもあります。IoTで成功するには、「人材」「組織」「経営者」、この3つが全て揃い、トータルフットボールをやっていくことが重要かと思います。

    小泉:
    なるほど、ありがとうございました。

    話が変わりますが、IoTというとドイツと日本の対比がなされていて、インダストリー4.0という話をよく聞くかと思います。私もドイツのインダストリー4.0、米国を中心としたインダストリアル・インターネット・コンソーシアムの両方のフレームワークを見てきました。

    私の解釈が間違っていなければ、フレームワークでは、決まり事を決めようとしているわけでなく、勝ちパターンの方法論みたいなものを定義しているように思えます。そのあたりを、ドイツの会社にいらっしゃる川野さんは、どのようにお考えでしょうか。

    川野氏:
    最近では日本のも含め、私も様々な欧米のリファレンスアーキテクチャ、を見てきました。出来上がったものを見ると基本的な構成は大きく変わらないと思います。ただ、米系と欧州系を比較した際に、やはり少し異なっている部分もありますね。

    米国は「実際に動くものやビジネスをつくるのが先」、デファクトスタンダードモデルという感じです。

    皆の合意よりも、とにかく皆が使う便利なインフラをつくるのが先です。

    私は、「PDF」のようなものをよく例に出して説明しています。PDFは、誰もが使えて便利なものなので、世界中の人がすでに使うインフラとなっていますよね。このように、どちらかというと「米国はデファクトスタンダードをつくるのが先」なのかなと感じます。

    一方、ドイツはどちらかというと「決め事を最初に決めよう」というところはあるかと思います。デジュリスタンダード型という言い方もするのですが、繋がる設定のフォーマット、各国間のプロトコルとかの決め事は決めて、ルールには従いますが、一方でアクションを起こしてガンガン殴り合う”大人のボクシング”的なところがあるかと思います。

    なんとなくボトムアップ型かトップダウン型という対比でも語れるかもしれませんが、やはり少し米国とドイツで考え方が違うところはあるかと思います。

    IoTNEWS 代表 小泉 耕二

    小泉:
    決め事とおっしゃっている、その本質は一言でいうと、どういうことでしょうか。例えば、通信プロトコルとかも、決め事に入るかと思いますが、決め事のレイヤーも色々あって、皆さん思われていることがバラバラなのではないかと思うのですが。

    川野氏:
    各レイヤーでこれが必要です、という議論をレファレンスアーキテクチャ上でやっています。

    このレイヤーはプロトコルだったり、このレイヤーはデータのフォーマットだったり、このレイヤーは購買辞書ですとか。そもそも購入したい製品についても、名前がわからないと取引が出来ないから、辞書をそろえて、抽象度の高いところで決め事をします。ERPやSCMとかITシステム的な各レイヤーでのAPIも含まれます。

    皆さんが、それぞれ、どのレイヤーで仕事をしているかで、決め事として何をしていくかは、勿論、異なっていくかと思いますね。

    小泉:
    情報システムの世界では、比較的昔からフレームワークやメソドロジーなどが昔から世界中に流通していて、やり方に則ってやろうという動き方だったのですが、八子さんITやクラウド側のフレームワークも見てこられて、今の製造業におけるフレームワークのあり方とか、その活用について、お考えはありますか?

    八子氏:
    米国のIIC(インダストリアル・インターネット・コンソーシアム)の場合、今決められているアーキテクチャについては「標準」ではなく、「参照することで、より物事が早く進みますよ」という程度なのです。ところが、日本のメディアが、そのレファレンスアーキテクチャを記事として取り上げる時、「標準化」と書くのです。しかし、レファレンスアーキテクチャは標準ではないのですね。どちらかと言えば、使えればベストという感じで、必ず使わなければならないわけではないのです。

    他にも、色々なプロジェクトで「新しい通信規格の内、どの通信規格が勝つのか」とか、「どれかを標準化しなくてはいけないのか」という議論が出るのですが、私は全部残ると思います。

    それよりは、むしろ早く作ったものが勝ちで、早く作ったものをインターコネクトするのが米国や欧州の考え方です。しかし、日本は、「どれかが標準化するまで様子見したい」という話になるですが、そうではないのです。

    日本は、昔から言われているフレームワークやメソドロジーというのにものすごく依存してしまう。例えば、PDCAというフレームワークをとってみても4つしかないわけでなくて、その過程の中にも色々ある。AIDMAも着眼点としてあるのであって、絶対に守らなけれならないものではない。

    一方で、日本は全体のアーキテクチャを決めるのが苦手で、構造体でどういうものがあるのか、分解して捉えたときにどういう枠組みが必要かの整理ができていない。全体像が見えていない。

    なので、欧米のモデルを借りるのですが、そこでは、皆さんが全体的に言うと、こうした解釈を作りましょう、その解釈ごとにレファレンスし、スピーディに動くビジネスモデルが成立しやすくなるという考え方を提示しているのです。

    日本は、あまり注意を払っておらず、0か100かで捉えがちなのではと思いますね。

    川野氏:
    それに関連してですが、日本のお客さんからよく言われることがあって、「欧米のアーキテクチャは仕様が甘いとか、人によって解釈の余地が出る」という話があります。

    言われると確かにその通りなのですが、八子さんが言われていたように、解釈や仕様の遊びがあるからこそ、システムとして動いていくとか、ビジネスとして臨機応変に対応できる側面があるかと思います。

    従来、日本が得意としているメカニカル・エンジニアリングの分野でも、歯車とかで設計の遊びがあるから、滑らかに動くのだという発想があります。そのことを、ソフトや企画でも同じ考え方が必要と受け止めれば良いのではと思います。

    小泉:
    ありがとうございました。

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