KDDI株式会社、株式会社KDDI総合研究所は、青少年のスマートフォン・インターネットの利用が長時間化し、日常生活に支障をきたす「スマホ依存」に関する調査・研究を2016年から行ってきた。
これまでの調査では、コロナ禍でゲーム行動症やネット依存の傾向を示す割合が、従来の1.5倍以上に増加していることを発表している。
また、国立大学法人東京医科歯科大学は、ネット依存の専門外来を2019年度に立ち上げ、ゲーム行動症の方を中心に入院治療、外来治療、当事者プログラム、家族支援プログラムなどネット依存の診療に取り組んできた。
こうした背景から、3者は共同研究を2020年から開始し、ネット依存外来の患者に対してのアンケート調査や研究用アプリでの利用状況の記録を通して、スマホ・ネット依存、ゲーム行動症の解明を進め、研究成果を活用してゲーム行動症患者の診断や治療用アプリの実用化を目指し臨床研究などを進めてきた。
そして本日、KDDI、KDDI総合研究所、東京医科歯科大学は、スマホ・ネット依存やゲーム行動症(Gaming Disorder)の改善に向けた研究開発を進める「サイバー精神医学講座」を、2023年10月1日に開設したことを発表した。
今回3者は、既存の共同研究を発展させる形で、「サイバー精神医学講座」を東京医科歯科大学の中に立ち上げ、スマホ・ネット依存、ゲーム行動症の診断や治療に資するプログラム医療機器を提供する。
具体的には、スマホ・ネット依存、ゲーム行動症などの行動嗜癖を対象に、スマートフォンアプリを用いたシステムのプログラム医療機器申請に関わる臨床研究を実施する。あらかじめ同意を得た通院患者を対象に日常的な行動情報を収集し、行動ログを医療情報と比較することで、行動嗜癖に関する病態を解明する。
加えて、診断および治療支援に用いることで、システムが治療に関連するアウトカム指標(有効性を評価する指標)の改善に寄与することを検証し、将来の実用化を目指す。
東京医科歯科大学 精神科 髙橋 英彦主任教授は、「ゲーム行動症は疾患概念が確立したばかりで、いわゆるスマホ依存やネット依存とともに、社会から十分理解されておらず、本人や家族も自覚していない場合が多いとされています。そこで、客観的な診断法や科学的で有効な治療法の開発が、疾病の理解、予防、啓蒙にも立ち返って有益になるものと期待しております。
これまでもKDDI、KDDI総合研究所とは共同研究を行い、研究用アプリでスマートフォンの利用状況のログを記録し、人工知能技術を用いた解析により、通常の聞き取りではわからなかったゲーム行動症の増悪や回復のパターンなども明らかになりつつあります。これらの成果をさらに発展させ、より汎用性の高い診断法や治療法開発を目指したいと思います。」と述べている。
なお、「サイバー精神医学講座」は、東京医科歯科大学内の「ジョイントリサーチ講座」制度の一環となる。研究の進展および充実を図ることを目的に、研究機関または企業などの学外機関から研究費および必要に応じ研究者を受け入れることにより、東京医科歯科大学と学外研究機関などが協力し、特定の研究内容について一定期間継続的に協働して研究を行うものだ。
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