製造業における製品の納期・数量や価格の調整、物流業における配送条件や価格の調整など、あらゆる産業のサプライチェーンにおいて、取引相手との様々な調整業務が企業・組織・個人等の間で日々大量に発生・遂行されている。
現状、これらの調整業務は人手で実施されることが主流だが、取引の小ロット化、製品の複雑化・多様化、きめ細かいニーズへの対応要求、さらには競争環境の激化等により、より複雑な調整業務をより短時間でより大量に、かつ正確に実施する必要性が高まってきている。
さらに、昨今の災害や疫病等による主要部材のひっ迫、少子化によるサービスの担い手の減少等の状況下においては、調整の成否が自社の存続・社会機能の維持をも左右するまでになってきている。
日本電気株式会社、沖電気工業株式会社、豊田通商株式会社、BIRD INITIATIVE株式会社、国立大学法人東京農工大学、学校法人中央大学、国立大学法人名古屋工業大学は、東京大学ほか、合計33会員からなる「自律調整SCMコンソーシアム」を設立した。
同コンソーシアムは、サプライチェーンにおいて日々発生している「企業・組織・個人間での利害や挙動の調整業務」を効率化することを目指し、先進技術を活用した実用的な調整業務フローの整理と検証、その発展と普及を主たる活動として、ソリューション提供者、ユーザー、学術専門家等の様々な立場のメンバーによる協働で進めていく。
製造業においては、予想を超えた製品需要の到来や必要部材の納入遅れに対応するための、取引先との納期や数量の調整等がユースケースの一例となる。また、物流業においては、突発的な荷送依頼やトラック到着遅れに対応するための納期・価格等の調整や関係者との受入条件の調整等がユースケース例としている。
同コンソーシアムでは、このようなユースケース群に対して、業界の商習慣や周辺業務との整合性、不本意な調整への合意が強制されないこと(自己決定権の確保)や、対外秘情報の提供が不要であることといった実用上の要件を満足しつつ、自動交渉AI技術等の活用により劇的な効率化を実現するソリューション・アーキテクチャーを開発・整理し、実証実験を行う。
また、調整業務の効率性はサプライチェーンを通じて連鎖することから、他人が効率化を実現することで、自分の効率性も上がるという性質がある。すなわち、効率的な調整業務フローは、そのユーザーが増えるほど各ユーザーの得られる価値も相乗的に高まる。
同コンソーシアムでは、効率的な調整業務フローを普及させるための活動を積極的に推進する。単なる報告書発表や講演・展示に加えて、調整メッセージの標準仕様策定と参照実証開発、国際的な標準化団体や業界団体へのインプット、学術界でのコミュニティ形成等も行う。
なお、同活動は令和3年度ルール形成を用いた省エネルギー加速型市場形成促進事業費補助金に採択されている。
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