国内における食品ロス量は、令和元年度時点で570万トン、それを企業等が排出する事業系(309万トン)と消費者が排出する家庭系(261万トン)でおよそ半々ずつ分け合っていると推計されている。
モノやサービスの利用を通じた社会貢献への関心は高まっており、今後は実際に参加する消費者が急速に増えることが見込まれる。SDGsの目標の一つとして最も身近な社会課題の一つである食品ロス削減についても、モノやサービスの利用で貢献したいと考える消費者が増加すると共に、そのニーズを捉えたい企業側の取り組みが一層活発化するものと予測される。
シルタス株式会社、株式会社イトーヨーカ堂、今村商事株式会社、株式会社サトー、凸版印刷株式会社、株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)および株式会社日立ソリューションズ西日本は、参画するSFC構想研究会の活動として、フードチェーン全域を産地~小売店舗、小売店舗、小売店舗~消費者の3つの領域に分け、それぞれ食品ロス削減に関する実証実験を行うことを発表した。
産地~小売店舗における実証実験では、青果物が持つ様々な情報のうち、これまであまり利用されてこなかった情報を活用した新たな価値を消費者に提供する販促をイトーヨーカドー曳舟店を2022年1月12日~2022年1月31日まで実施し、食品ロス削減への効果を検証する。
具体的には、産地で生産者が入力したアイコトマト、なめこ、ほうれん草の収穫時の状態や形、色味等の情報を販促用に加工し、店頭のデジタルサイネージや電子チラシアプリ「Shufoo!」を通じて発信する。その情報を受け取った消費者は、店頭で商品を確認し購入する。これにより、消費者の商品選択の幅が広げられるか検証する。
また、青果物の流通状況は、生産出荷時にコンテナに取り付ける電子タグ「ZETag」を通じて、卸売業者、小売店舗での入出荷時に把握する。電子タグを通じて青果物の流通状況をリアルタイムで追跡しながら、消費者への販促を適切なタイミングで実施する。これにより、流通状況に応じた販促(店頭およびスマートフォン上)が可能かどうか検証を行う。
同実証実験において、イトーヨーカ堂は実証実験の実施場所の提供、実証実験の運用を行い、凸版印刷はShufoo!とデジタルサイネージを利用した販促の実施、およびZETagを提供し、日本総研は実証実験の全体設計・推進を行う。
次に、小売店舗における実証実験では、賞味・消費期限別に在庫を可視化し、電子棚札を活用したダイナミックプライシングを導入することによる、店舗における業務効率化と食品ロス削減への効果を、イトーヨーカドー曳舟店にて2022年1月12日~2022年1月31日、2022年2月9日~2022年2月28日の計40日間、検証する。
具体的には、商品の入荷時に、賞味・消費期限別のコードが印字されたラベルを発行し貼り付ける。ラベルの発行データ(SKU×賞味・消費期限)を専用ツール「サトー・ダイナミック・プライシング・ソリューション」に取り込むことで、可視化された賞味・消費期限別の在庫状況を踏まえたダイナミックプライシングを行う。消費者は、電子棚札と商品に貼り付けられたラベルを確認し、商品を通常通りPOSレジで購入する。
対象商品は、デイリー・日配品から10SKU(同じ棚に陳列される同一SKU内で、賞味・消費期限のバラツキが発生することが多いものを選択)となっている。
同実証実験において、イトーヨーカ堂は実証実験の実施場所の提供、実証実験の運用を行い、サトーはダイナミックプライシングシステムの構築、電子棚札の提供、BluetoothタグおよびBluetoothタグデータを解析するプラットフォームを提供、日本総研は実証実験の全体設計・推進を担う。
3つ目の小売店舗~消費者における実証実験では、イトーヨーカドー曳舟店にて20~60代の男女約100名を対象に2022年1月12日~2022年1月31日、2022年2月9日~2022年2月28日の40日間、購買データや消費・廃棄データを「健康」という切り口で活用しながら、食品の購入・調理・保管を支援する以下のようなサービスを提供し、家庭内での食品ロス削減への効果を検証する。
- 購買データを活用した購買支援
- 消費・廃棄データの取得による在庫管理
- データを活用した調理支援
- ゲーミフィケーションを活用した購買促進
- 消費・廃棄データによるデマンド型の需給予測
買い物リストや栄養バランスを考慮した商品レコメンドをスマートフォンに表示させることによって、消費者の購買行動の支援が可能か検証する。
購買データと消費・廃棄データを連携させることによって、家庭内の在庫管理が可能か検証する。消費・廃棄データは、Bluetoothタグと重量センサの組み合わせ、あるいは手入力により消費・廃棄時に取得する。また、商品購入等に使えるポイントを付与するインセンティブによって、消費者による消費・廃棄データの登録作業が促進されるか検証する。
栄養バランスや家庭の在庫情報、そして食品ごとのおおよその賞味・消費期限を勘案したレシピ提案を行うことで、期限の近い食品の優先消費を支援できるか検証する。
健康状態を購買データから予測してキャラクターの姿に反映させる、というゲーム要素を取り入れた形(ゲーミフィケーション)で提示し、不足する栄養素の購入を促すことで、健康的な買い物の支援と購買促進が可能か検証する。
小売りにおける需給予測で一般に用いられることが多い来店客数等よりも、さらに川下の情報源である消費・廃棄データを活用した需給予測が可能か検証する。
また、シルタスはSIRU+をベースとした消費者向けアプリケーションの構築、日本総研は実証実験の全体設計・推進、日立ソリューションズ西日本は重量センサの提供を担う。
なお、上記3つの実証実験は、経済産業省委託事業「令和3年度 流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用した食品ロス削減の事例創出)」を一部活用し、東京都内で実施される。
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