地域の歴史と文化に深く関係している日本酒は、国内消費量が1973年度にピークをむかえ、2020年度にはその3割にまで減少したと国税庁より報告されている中、純米酒や純米吟醸といった特定名称酒の消費は拡大しており、この分野で躍進した酒蔵も数多くある。
一方、飲食店や宿泊施設をはじめとする日本酒提供の現場は、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行する以前から、慢性的な働き手不足という課題を抱えていた。
株式会社シンクは、会津東山温泉 くつろぎ宿 千代瀧が2019年から始めた「地酒の飲み放題」サービスにおいて、現場の省人化を目的に、IoT日本酒ディスペンサー「のまっせ」を試作開発している。その中で、省人化で実施した日本酒提供の自動化の中で、「だれが、いつ、どのようなお酒を飲んだのか」というデータを収集できることが分かった。
このデータの有用性に注目してのまっせの研究・開発を始めた2019年末に、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行したことで、のまっせが持つ非接触での日本酒提供が評価され、湯野上温泉駅での地酒ふるまいや地域のイベントに多数参加する機会につながり、省人化とデータ化についての実証実験を行ってきた。
具体的には、2022年に株式会社KDDI総合研究所らと、日本酒IoTで飲み手の嗜好性を解析する実証を行い、のまっせを活用した収集データの有効性を確認したほか、経済産業省が実施する「第四回 令和2年度事業再構築補助金」の採択を受け、サービス化に向けた第3世代ハードウェアおよびソフトウェアの開発を行っている。
このほどシンクは、のまっせのサービス開始に向けた新型機を開発した。
サービス開始に向けて開発した第3世代のまっせは、飲み手自身がのまっせ独自の電子チケット「Eka」をかざすことにより、設定した量の日本酒が自動で注がれて、省人化を実現する。さらにEkaは、都度支払や飲み放題の時間制限、飲むことのできる銘柄の設定や杯数制限もできるため、省人化で失われがちな接客サービスに、設置場所に応じた柔軟性と独自性をもたらすという。また、会津塗をイメージしたデザインとコンパクトなサイズにより、さまざまな設置場所と利用シーンで活用できる。
のまっせを活用することで、日本酒を自動で提供して現場の省人化を達成することに加え、提供した日本酒のデータを蓄積して飲食店や宿泊施設、酒蔵などにおける商品開発やサービス開発の可能性を拡大する。日本酒を楽しむ飲み手には、飲んだ銘柄を自動で記録する「御酒飲帳」SNSサービスを提供し、日本酒の新しい楽しみ方を提供する。
なお、のまっせはシンクが運営するデジタル田園酒場「かんます」(福島県会津若松市)にて体験できる。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。