月間1,100万人のデータから見えてきたこと
小泉: その集まってきたデータを、デジタルマーケティングのサービスとして展開したのですね。
亀卦川: そうなんです。とはいえ、最初は「Shufoo!」ユーザーデータのCRM(顧客関係管理)として使い始めたのがきっかけです。3年前のことです。私たちとしても、ユーザーが1,110万人(月間)まで増えたからといって、これで満足はしていません。もっと増やしたいですし、一人あたりの活用頻度やユーザーの利便性をさらに高めるなど、改善するべきことは多くあります。
そのためには、ユーザーのこともっとよく知る必要があります。そこで、これまでに集まってきたデータを自分たちで独自のDMPとして構築し、プロモーションなどに活用していたわけです。
小泉: そのDMPからは、具体的にどのようなことがわかるのですか。
亀卦川: 「Shufoo!」のデータから、ユーザーは1人あたり平均3、4店舗を日常の買い物に使っていることがわかります。そこからさらにユーザーの行動を追っていくと、同じ商圏にある3、4店舗のうち、どこがうまくお客さんを獲得できているのかが見えてきます。

小泉: なるほど。主婦の日常の買い物の傾向だけでなく、リアル店舗の営業の実態についてもわかると。
亀卦川: おっしゃる通りです。また、電子チラシは「潜在的な興味関心」を発見できるところもメリットです。たとえば、「Shufoo!」の展開領域をスーパーやドラッグストアだけではなく、学習塾やクルマのディーラー、不動産などにもひろげた場合には、「小泉さんが、昨日まで見ていなかったクルマのチラシを急に見始めた」という事象をとらえることができます。
通常のオンラインサービスでは、ユーザーの顕在化した行動データを分析したうえで、広告を発信したりレコメンドしたりします。そうすると、ターゲティングの範囲がしぼられる分、「潜在的な興味関心」は見えなくなってしまいます。つまり、「主婦の方にクルマのチラシが届く」という機会はできません。
ところが、「Shufoo!」の場合は、さまざまな分野のチラシを「プッシュ」型で届けるので、気が付かなかった潜在的ニーズを引き出せるのです。これはある意味、「セグメントしないメディア」としての私たちの価値です。
小泉: なるほど。せっかく興味の「きざし」が取れるのに、範囲を最初からしぼってしまうとそれが見えなくなりますからね。
亀卦川: ええ。電子チラシのもう一つの特徴は、コンテンツそのものが広告であるということです。通常のメディアだと、コンテンツを充実させて、その基盤の上に広告を仕込むのが普通ですよね。
しかし、「Shufoo!」の場合は、サイトに訪れたユーザー全員が自ら広告を見にきてくれているわけですから、当然、その興味関心は高いのです。これも他のメディアにはない特徴ですね。この強みを活かせば、電子チラシ以外にも、さまざまなサービスを効率的に届けられるプラットフォームになります。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。