ヒト・モノ・場所のすべての軸から生活者の「買い物欲」を動かしたい
小泉: お話を聞いていると、御社のDMPを通して、リアルとデジタルのさまざまなデータがつながっていくイメージが持てます。
亀卦川: ありがとうございます。大事なことは、(プラットフォームにおける)弊社の立ち位置だと思っています。私たちは商品を売っているわけではありませんから、その分、立ち位置はニュートラルにいきたいんですよ。
私たちが一人一人のお客さんにモノを売るサービスを提供して、対価をいただくということになったら、このようなビジネスモデルはつくれません。ですから、私たちは排他的なアライアンスも結びません。
小泉: 今後はどのように展開されていくのでしょうか。
亀卦川: これまでのデジタルマーケティングは、過去のデータに紐づいているのが普通でした。しかしこれからは「過去」ではなく、「Now(今)」のデータですね。刻々と変化する今のデータに基づいた「リアルタイムオケージョン」の世界観をどうつくるかが、今後の課題です。
そして、ゆくゆくはデータをフル活用してお客さんの未来の動きを予測し、店舗コミュニケーションを最適化できるところまでもっていきたい。そのために、さまざまなデータが必要です。「Shufoo!」によって、「ヒト」のデータを集めるしくみはできてきました。また、凸版印刷の子会社であるマピオンは、全国900万か所の施設情報を持っていますから、「場所」のデータもあります。
唯一持っていないのが、「モノ」のデータです。たとえば、小泉さんがある時、ふと目に留まった商品があるとします。その商品名をインターネットで検索すれば、その商品情報を見ることはできます。しかし、それがどこに売っているかわからない場合が多いのです。
小泉: すごくよくわかります。

亀卦川: その商品(モノ)が全国のどこにあるのか、「〇〇さんのつくったおいしいキャベツ」はどこで売っているのか、こうしたモノの動きの情報を買い物の世界に取り込んだ「モノ軸」のしくみも、私たちはつくっていきたいと思います。
基本的にメーカーはテレビCMなどを打ち、商品軸でプロモーションします。「会社名」より「商品名」です。しかし、商品名でマーケティングするものの、その商品がどこで買えるのかわからないということが問題です。
そこで、私たちのしくみを使い、メーカーのマーケティングをリアル店舗まで直結できたら、win-winのしくみをつくれると思います。既にメーカーとの連携を始めています。私たちの役割は、メーカーが伝えたいコミュニケーションのまま、直接的にユーザーの気持ち(買い物欲)を動かしていくことです。これをぜひやりたい。
小泉: なるほど、「モノ軸」とはそういうことですか。お店によっては、自分が欲しい商品が置いていないことがよくあります。店員に聞けばいいのですが、うろうろさまよって時間を無駄にしてしまうこともありますよね。挙句の果てに「置いてません」と言われてしまう。そうしたことがなくなるのは、素晴らしいことです。
亀卦川: ええ。そうしたヒト・モノ・場所のデータをフルに使って、お客さんの快適なお買い物を実現すること私たちの今後の課題です。
なお、「場所」に関しては、今まさにマピオンのデータを活かした広告配信のしくみを、森谷が中心になって進めています。
森谷: 「環境データマート」という新たな取り組みです(※)。私たちのDMPは基本的には、一人の生活者がどのような人なのかをどんどん突き詰めていくプロセスです。でも、人の行動は、「今日は雨が降ったから買い物をやめよう」というようにすぐに変わります。一人の生活者が行動を決める要因は、自分の中にある「性格的な要因」と「外的な要因」の二つがあります。

私たちのDMPには今、「外的な要因」のデータが欠けています。このままマーケティングを続けてしまうと、どこかでマーケティングの効率が上がりきらなくなる段階がくると思っています。
小泉: 外的な要因のデータにはどのようなものがあるのですか。
森谷: ヒトがいる場所の気温差や降水確率、明日は雨が降るのか、寒いのか/暑いのかといった天気の情報です。あるいは、年収層などの居住者の属性がわかる「ジオデモグラフィクス」と呼ばれるデータもあります。
これらのデータをDMPと組み合わせて、生活者の行動を予測する精度を上げていきたいと考えています。
小泉: これからがますます楽しみです。本日はありがとうございました。
※本インタビューは11月7日のリリース前に行いました。「Shufoo! 気象ターゲティング広告」の記事はこちら。
【関連リンク】
・凸版印刷(TOPPAN)
・マピオン(Mapion)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。