従来の3D都市モデルは、建築物を外から測量して構築するため、詳細な建物情報を持たない外形のみの表現であった。そのため、比較的広域の分析には適するものの、建物内部から周辺のまちまで連続した計画やサービスに用いるには十分な情報を持ち合わせていなかった。
そこで、建築物の壁、扉、階段、部屋などの詳細な3次元形状や、面積、材料などの属性情報を持つBuilding Information Modeling(以下、BIM)を、道路や地形を含む3D都市モデルに統合することは世界中で検討されてきた。
ただし、既存のBIMには位置情報が含まれていない場合が多く、変換の過程で属性情報が失われてしまうなど、技術的な課題もあったことから、これまで利用が限定されていたのだという。
そうした中、株式会社日建設計は、国土交通省が主導する3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化のプロジェクト「Project PLATEAU(プロジェクト・プラトー)」に参画しており、本日、デジタル庁による「デジタルツイン構築に向けた3D都市モデルとBIM連携に関する調査研究」業務において、株式会社日建設計総合研究所、アジア航測株式会社、一般社団法人buildingSMART Japanと協働し、その成果を発表した。
今回の調査研究を通じ、屋内空間の詳細な構造に関する情報を含む3D都市モデルの標準仕様「CityGML2.0 建築物モデル(LOD4※1)」及び、BIMのデータ連携仕様「IFC※2」を策定した。
※1 CityGML2.0 LOD4(建築物):CityGML2.0は、OGC(Open Geospatial Consortium)で提唱されている、3D都市モデルを扱うための国際標準データ形式。3D都市モデルの詳細な表現レベルに応じてLOD(Level of Details)が設定されている。LOD3では、建築物の外形や開口部までの描写であった一方、今回日建設計が策定したLOD4(建築物)では、屋内の詳細な構造まで描写できるようになった。
※2 IFC(Industry Foundation Classes):buildingSMART Internationalが策定した三次元の建物情報(BIM)モデルの国際標準データ形式。今回の取り組みでは、IFC2x3 Coordination View2.0に基づく建築意匠BIMモデルに位置情報を付加した定義とマニュアルを整備した。
これにより、屋外空間と屋内空間をシームレスに可視化し、部屋から避難所までの避難ルートの検討や、周辺建物の影響を考慮した眺望のシミュレーション、敷地内の公共空間を含めた道の誘導案内など、屋内外をまたいだ新たなユースケース開発にも対応できるようになる。

また、既存のBIMデータ(IFC2x3形式)をProject PLATEAUの標準仕様に変換できるツールを開発した。
今回策定した仕様では、屋内マップや環境シミュレーション、避難等の移動シミュレーション、視線解析等のユースケースを想定している。
周辺の建物との関係を考慮したシミュレーションや、屋内外をまたいだユースケースに対応することが可能。
例えば、トップ画のように、建物単体ではなく、複数の建物をまたいだ移動のシミュレーションを行うことで、地域規模での防災計画などが行いやすくなる。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。