段ボールは、内層の波状の紙と外層の平らな紙を貼り合わせたものを基本構造とし、梱包する製品や商品の特性に合致した強度と緩衝性を有する特性が求めらる。受注した各段ボールには強度などの仕様があり、仕様に準ずる原紙を使用する。
段ボールの受注は少量多品種であるため、ひとつの原紙で多品種をまとめて製造するのが効率的だ。ただし、まとめて多品種を製造する原紙は、すべての品種の段ボールに求められた仕様を満足する必要がある。
ここで生じる原紙の格上げなどが、製造を効率化するための「コスト」になる。また、多品種をまとめても、段ボールに加工される原紙がある長さ未満なら、それらは製造できないという条件がある。
これによって製造できない段ボールが「落穂」になり、コストを抑制すれば、多品種をまとめて製造することに限界が生じるため、落穂が増える。一方落穂を減らそうとすると、原紙の格上げは避けられずコストが増える。
このように、コストと落穂は、トレードオフの関係となっている。
こうした中、国立大学法人電気通信大学(以下、電通大)と東芝デジタルエンジニアリング株式会社は、「進化計算」を段ボールの生産計画の最適化に適用し、コストと落穂の数の両方を最小化することができたと発表した。
東芝デジタルエンジニアリングは、段ボール製造業向けの総合基幹システム「CoPaTis(コパティス)」を開発・販売しているが、今回、電通大大学院情報理工学研究科情報学専攻の佐藤寛之教授が専門とする「進化計算」に着目し、段ボールの生産計画の多目的最適化に関する共同研究を実施した。
「進化計算」とは、遺伝子交配のように、優秀な解同士の掛け合わせを繰り返すことで、より良い解を求めることができる手法だ。この手法を利用することで、段ボールの生産計画において、トレードオフの関係にあるコストと落穂の数を削減することが期待されている。
「進化計算」は、各生産計画を生き物のように扱い、親となる二つの生産計画を適用することで、子となる生産計画を生成することを繰り返す。
この「進化計算を」活用し、5種類の方法で、一日当たりの注文書数が1,000件を超える、生産計画のパターンが極めて膨大な大規模な段ボール工場を想定した模擬実験を試行した。
その結果、すべて熟練者の生産計画より優れた結果を示しており、特に、赤で示した手法(NSGA-II)では、熟練者に対して落穂を約半分に抑制するだけでなく、より低コストな生産計画を自動的に生成することができた。
今後は、上記の共同研究の結果を段ボールを生産する実際の工程に適用し、熟練者による段ボールの生産計画と「進化計算」による生産計画を比較・検証することで、実運用時の効果を明確化する予定だ。
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