ソニー独自のLPWA技術「ELTRES」、100 km超の無線通信でひろがるIoTの可能性

都会の避難訓練から物流まで、多様なユースケースを想定

小泉: 実証実験は地方が多いのですか?

井田: いえ、アドベンチャーレースは特殊なケースです。実際には、都市部の方が多いですね。都市部では子供の見守りや避難訓練の実証実験を行っています。

ソニー独自のLPWA技術「ELTRES」、100 km超の無線通信でひろがるIoTの可能性
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 コネクテッドサービス事業室 室長 井田亮太氏

小泉: 避難訓練というのは、バックアップ用のネットワークにLPWAを使うというようなことでしょうか。

井田: そうです。NSWさんと行った千葉県富津市の事例があります。富津市は海辺の町ですから、津波の被害にさらされる危険があります。避難警報を発令してから、5分間で海抜10メートルの場所まで行くという市としての目標があります。そのための避難訓練を、富津市では毎年1回、行っています。

その際、紙の地図を住人に渡して、彼らが5分ごとに自分の居場所をプロットし、市の職員が回収して、集計するということをしていました。

しかし、高齢化が進んでいることもあり、実際に移動しながら自分がどこにいるのか正確にプロットするのは難しいそうです。あとは、集計する職員の手間がものすごくかかります。

そこで、LPWA通信ができるタグを住人のみなさんに持っていただいて、NSWさんのIoTプラットフォーム「Toami」で位置情報を集計することで、防災訓練のプロセスがいっきにデジタル化されました。これも非常に評価が高かったですね。

小泉: この実験の場合は、基地局との距離はどれくらいですか?

井田: 約50 kmです。

小泉: すごいです。それだけ通信の距離があるとIoTも状況が変わりますね。しかもソニーさんだと安心感があります。

井田: ありがとうございます。他にも農業の分野で水田から水温や水位のデータを集める実証実験を行いましたが、97 kmの距離で一つの受信局で通信ができました。距離はかなりの強みです。

小泉: 物流分野でのユースケースはどうですか?

井田: 物流については、実証実験がもうすぐ始まります。荷物の可視化は注目されてはいますが、倉庫の中のどこにあるのか、途中の輸送経路なのか、お客さんのところなのか、すべてが可視化できているわけではありません。

小泉: しかもつながっていません。

井田: そうなんですよね。ばらばらなんです。特に、途中が抜けてしまっています。その抜けた部分を可視化するために、物流車両との通信が可能なELTRESが使えるだろうと考えています。

ソニー独自のLPWA技術「ELTRES」、100 km超の無線通信でひろがるIoTの可能性
ELTRESを使ったIoTネットワークのしくみ

小泉: 費用対効果はどうですか? LPWAはさきほどの防災訓練のように、ヒトの命に関わるケースなどで活用が期待される技術です。しかし、事業者側としては、基地局を立てても収益がないと厳しいです。

井田: そうですね。さまざまなビジネスモデルがありますが、一つは自治体との連携です。たとえば山梨県と長野県にまたがる八ヶ岳は、日本で最も遭難者が多い山です。自治体が相当な予算を使って救助を行っています。

私たちの技術を使って遭難者を減らせるということであれば、彼らとしてもメリットですし、私たちのビジネスとしても、ROI(投資利益率)に基づいて受信機を設置できます。

小泉: 公共性が高い用途での活用が期待されますね。これまで何でも人力でやっていて限界があったことがIoTによって解決されていくのは素晴らしいことです。

井田: ELTRESはETSI(エッツィ:欧州電気通信標準化機構)から国際標準規格として採択されましたから、自治体さんなどに安心して使ってもらえると思います。

小泉: そうですよね。あと、海外のお客さんも安心して使えますね。広大な土地や砂漠がある海外ではLPWAがとても期待できると思います。

ちなみに、「ELTRES」とはどういう意味なのでしょうか?

北園: スペイン語で「EL」は定冠詞、「TRES」は「3」という意味です。冒頭でご説明した私たちのLPWAの3つの特徴を表しています。

小泉: なるほど、そうだったんですね。これで、3つの特徴を忘れなさそうです。本日はありがとうございました。

【関連リンク】
ELTRES

無料メルマガ会員に登録しませんか?

膨大な記事を効率よくチェック!

IoTNEWSは、毎日10-20本の新着ニュースを公開しております。 また、デジタル社会に必要な視点を養う、DIGITIDEという特集コンテンツも毎日投稿しております。

そこで、週一回配信される、無料のメールマガジン会員になっていただくと、記事一覧やオリジナルコンテンツの情報が取得可能となります。

  • DXに関する最新ニュース
  • 曜日代わりのデジタル社会の潮流を知る『DIGITIDE』
  • 実践を重要視する方に聞く、インタビュー記事
  • 業務改革に必要なDX手法などDXノウハウ

など、多岐にわたるテーマが配信されております。

また、無料メルマガ会員になると、会員限定のコンテンツも読むことができます。

無料メールから、気になるテーマの記事だけをピックアップして読んでいただけます。 ぜひ、無料のメールマガジンを購読して、貴社の取り組みに役立ててください。

無料メルマガ会員登録