ここまでできる、シーメンスが考える製造業のIoT —シーメンス 島田氏インタビュー 第二回

シーメンス株式会社 デジタルファクトリー事業本部 プロセス&ドライブ事業本部 専務執行役員 事業本部長 島田太郎氏へのインタビュー第二回。

【シーメンスインタビュー 一覧】
第一回:インダストリー4.0の本場ドイツのスマートファクトリー、その本質は何なのか? 設計終了後5分で製造が始められる秘密
第二回:ここまでできる、シーメンスが考える製造業のIoT —シーメンス 島田氏インタビュー
第三回:製造業のIoTが、月額数千円から始められるIoTプラットフォームとIoT時代の工場のセキュリティ

 

データの見える化だけで「うちはIoTができている」という考えは、根本的に危険

ところでIoTって何だと思いますか?

私は、IoTというのは「標準技術で専用技術を置き変えていくもの」だと思っています。例えば、「IoTで工場内をモニタリングできます」という話を聞きますが、こんなことは、もう20年も30年も前からやっています。

例えば、高機能なガラケーはスマホと同じことができますが、その電話会社の専用線のなかで使われています。しかしiPhoneやアンドロイドのように世界歴に標準的なものが出てくると、淘汰されてしまいます。

実は、こんなことは日本で過去に何十回と起こってきています。PC-98というパソコンがありましたが、最終的にはDOS-V互換機というパソコンに駆逐されました。では、「なぜ98を買わないのですか?」言われると、それは標準品の方がいろんな入れ替えが簡単にできるし都合がいいわけです。

これが、製造におけるIoTの本質的な課題だとみるべきです。「今、モニタリングできているからIoTができている」、ということではないのです。

つまり「ドイツはIoT進んでいるらしいぞ」とドイツまで来て、モニタリングができている状況を見て「うちはIoTできていたのか」という人がいるのが本当に危険なのです。

そこで、私は、「それ専用品ですよね、外に繋ぐときどうするのですか。次から次へと変わっていくなかで、改修をいちいちやるのですか?」とお伝えします。

 

工場に専用線を使うということは、30年前に戻るということ。シーメンスは工場のデジタルツインをデザインする

そして一番重要なのはセキュリティです。セキュリティの問題がクリアできなければ、IoTを諦めるようになるのです。

ちなみに、ここで、「セキュリティを考えるのが大変だから、専用線で繋ぎます」ということになると、20~30年前に戻って、いっぱいをお金使って、全部無駄にしてしまうことになりかねません。

「じゃあシーメンスさん、そのデジタルエンタープライズを持ってきてください。それで工場とPLMまでぱっと繋げるのですよね?」とおっしゃるかもしれませんが、実はそんな簡単な話ではありません。

残念なことに、下記のように多くの作業と、様々なプロセス間の依存関係がありまして、ユースケースごとに壁はどこにできているのかを考えて、それを一つずつデジタルに移していかなければいけないのです。

ここまでできる、シーメンスが考える製造業のIoT —シーメンス 島田氏インタビュー 第二回

例えば、「新規の製造設備を作りましょう」というと、実はこれだけあります。(上図)

工程設計やシミュレーションがあって、それから事務設計、レイアウトして、制御設計をすると電気配線図ができて、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラー:制御装置)というソフトウェアできて、コンディショニングします。これは全て別の人がやっています。

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しかし、シーメンスでは、「これらを同じプラットフォーム上で、一人の人がやろうと思えばできるようにしてしまおう」という事をやっています。

2007年、シーメンスはNXというCAD を開発していたUGSという会社を買収しました。今のCADはほんとに性能が良くなっていて、「シンクロナステクノロジー」というのですが、引っ張ったり押したり、寸法を入れて形状を変えたり、CAD上で自由自在に飛行機の設計ができるようになっています。

こんなにいいものを設計だけに使っているのはもったいない話ですので、工場内でも活用し三次元で表現していけば、あっという間にバーチャル工場が定義できてしまいます。

一方で、工場内を動かしているPLCがありますが、それは1970年代に発明され、その時代はインダストリー3.0と言われておりました。ただ、ラダー回路をソフトウェアにしただけなので、埋め込みソフトに似ており、ハードウェア依存性が強いという課題がありました。

そのような問題をどんどん取り除いて、トータル・ディグレート・オートメント・コンセプトということで、ハードウェア依存、HMI(Human Machine Interface:対人マシンインタフェース)、電圧を制御してモーターの制御をするドライブ、モーションなどを、全部同じような環境でできるようにソフトウェア化をしてきたのです。

SOA (Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)化と言ってもいいかもしれませんね。シーメンスは1995年から2010年、長い時間をかけてこれに対応してきました。2010年以降はこれを「TIAポータル」と呼び、IoT時代では、ネットワーク、セキュリティ、診断、データ管理も含めた形でできるようにしています。

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最近のバージョンですと、クラウドで工場をコントロールすることができます。シーメンスは過去10年くらいかけて作ってきたのですが、このソフトウェアでコントロールする実際のモノの世界と、三次元の世界をくっつけてしまおうと。

例えば、四角い箱を右から左に動かすことを簡単にシミュレーションでき、その際に動作チャートも表示されるのですが、これが非常に重要なのです。これはきっちりとした三次元のCADシステムですから、重量を考えると一体どれくらいのトルクが必要かなどを計算することができます。

そうすると、このトルクで最も適応性がいいモーターとドライブの最適な組み合わせを、データベースで取り込んで、その特定情報やコントロールの情報も取り込みます。最終的には、自動的に実際に工場で動かすためのコントローラーをソフトウェアにつないでシミュレーションすることも可能です。これは、HIL(Hardware in the Loop)と呼ばれるものですが、ソフトウェアの中だけではなく実際に工場で使うハードウェアもつないでシミュレーションできるのです。

昔ですと、シミュレーションはロジックを確立するだけでしたから、ソフトウェアのバグ取りはできなかったのですが、TIAポータルであればできますし、ソフトウェアで改修したものをもう1回詳細に解析したり、分析したりすることができるようになったのです。

例えば、現場でメンテナンスをしていて、CADのトレーニングを受けて使えるようになると、今までとできることが全然違ってくるわけです。

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シーメンス株式会社 デジタルファクトリー事業本部 プロセス&ドライブ事業本部 専務執行役員 事業本部長 島田太郎氏

 

最終回に続く。

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第一回:インダストリー4.0の本場ドイツのスマートファクトリー、その本質は何なのか? 設計終了後5分で製造が始められる秘密
第二回:ここまでできる、シーメンスが考える製造業のIoT —シーメンス 島田氏インタビュー
第三回:製造業のIoTが、月額数千円から始められるIoTプラットフォームとIoT時代の工場のセキュリティ

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