北海道日高地方は、日本における軽種馬の生産頭数約7,000頭の約8割を占めており、中でも新冠町は1,000頭以上を生み出す産地で、地域の重要な産業を担っている。新冠町の多くの生産牧場では、競りに向けて調教・育成を担当する育成牧場に仔馬を預ける。生産牧場からは預けている仔馬の状況を確認したい、また関東、関西などに在住の馬主からは、レースに出走するまでの仔馬の育成状況を遠隔地から高精細映像で観察したいというニーズがある。
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(以下、ATR)とKDDI株式会社、シャープ株式会社、国立大学法人東京大学大学院情報学環中尾研究室、北海道新冠郡新冠町、日高軽種馬共同育成公社は、軽種馬(※1)の育成支援を目的に、5G を活用した8K映像のリアルタイム伝送を行い、軽種馬のトレーニングの様子や厩舎内での様子を遠隔から観察、見守りを行う実証試験を実施し、ドローンから撮影した8K映像のリアルタイム伝送に成功した。
同試験は、2019年11月4日から11月12日に北海道新冠町の日高軽種馬共同育成公社において、以下の内容を実施した。
- ドローンを活用した8K映像のリアルタイム伝送によるトレーニングの観察
- 8K映像のリアルタイム伝送による軽種馬見守り
- 厩舎に設置した8Kカメラで撮影した軽種馬の映像を、5G伝送で8Kモニタにリアルタイムに表示。歩様、毛並み、筋肉、骨格などを細部まで観察。
- 厩舎に設置した4台の4Kカメラで撮影した軽種馬の映像を合成し、4方向からのマルチアングル映像 (8K超高精細映像) として、5G伝送で8Kのモニタにリアルタイムに表示。1頭の軽種馬の様子を4方向から観察。
トレーニングコース上空のドローン飛行区域を5Gエリア化し、上空から撮影した軽種馬のトレーニングの8K映像を伝送し、地上の8Kモニタにリアルタイムに表示する。映像でトレーニング中の軽種馬の様子を詳細に観察する。
同試験の結果、ドローンに搭載した8Kカメラからの映像を通じて、走行している軽種馬のトレーニングの様子や足運びまで観察できることを確認した。加えて、5Gエリア化した厩舎内に設置した8Kカメラの映像や、4Kカメラ4台の映像を合成したマルチアングルの8K映像を、事務所などの遠隔地へリアルタイムに伝送することで、厩舎やトレーニングコースに出向くことなく歩様や毛並み、筋肉の付き方、骨格などの育成状況・健康状態の確認が可能となった。
8K映像の5Gによるリアルタイム伝送が可能になることで、遠隔診断や健康状態の確認による軽種馬育成の効率化を実現するほか、ドローンから撮影した軽種馬が疾走する映像を観光施設や交通拠点などで放映することで、軽種馬への興味喚起や観光振興への貢献が期待される。
同試験における各者の役割は以下の通り。
- ATR
- KDDI
- シャープ
- 東京大学大学院情報学環
- 新冠町
- 日高軽種馬共同育成公社
同試験の実施、推進
本試験の実施、および5Gエリアの設計・構築
ドローンを用いた8K空撮システム(8Kカメラ x 1台)構築と8K映像伝送システム(8Kカメラ x 1台)構築
8K映像伝送システム(4Kカメラ x 4台)構築
同試験の実施アイディア提案
実施場所の提供、競走馬育成への応用評価
なお、同試験は総務省の5G総合実証試験(※2)の一環として実施された。
※1 体格による馬の分類の一つ。体型はスマートで、体重は400~500キログラム。運動能力に優れ、主に競馬や乗馬に用いられる。
※2 電波を有効に利用できる実現性の高い技術について技術的検討を行い、その技術の早期導入を図ることを目的として、総務省が「技術試験事務」を実施している。
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