トーア紡のスマートファクトリー化事例
トーア紡の事例については、トーア紡IT推進部部長の中井邦義氏がゲストスピーカーとして加わり紹介した。

トーア紡はウールを中心とした繊維業を営む企業であり、中井氏は会社の中では情報システム部門を管理する立場にある。
中井氏が辻氏とのセッションで紹介したのは3つの事例である。
電力デマンドの可視化で現場の管理意識向上
1つは化学繊維を製造する四日市工場において、電力デマンド(30分間を1つの単位として計量される使用電力)を可視化することである。

これはPLC(シーケンサ)から工場内の電力デマンドを取得し、先ほど辻氏が紹介したKYOSOが提供するモニターによって可視化するというもの。
この導入の前に、中井氏はまず工場に何度も足を運び、現場の人たちの親睦を深めることからスタートしたという。
「今まで情報システム部門側で働いており、現場のことをほとんど知らなかったという思いがありました。まずは工場に通い、どこでどんなデータが取れるのかを現場の人たちからヒアリングすることで距離を縮めました。」と中井氏は語る。
現場の人々の意識が大きく変わったのは、KYOSOのソリューションを取り付けた瞬間だという。
中井氏は「現場の人たちもKYOSOがソリューションを取り付ける場面を見ていたのですが、こんなに簡単に取り付けが完了し、便利になるのか、と皆驚いていました。また、モニターによって、あらゆる場所で電力状態を見ることができるので、現場にいる全員で電力を管理しコストを削減していこう、という意識に変わりました。」と述べた。
温度の遠隔管理で現場の働き方改革
2つ目は化学薬品精製における温度計を遠隔でモニタリングできるようにしたこと。
トーア紡では化学薬品を精製する機械に温度計を付けていたが、このデータをクラウドに上げて遠隔でモニタリングできるようにしたという。
中井氏は「今までは休日でも工場に出てきて、逐次チェックしなければならなかったが、クラウドに上げることで遠く離れていても管理することができるので、現場の人の働き方改革につながった。」と語った。
それに対してKYOSO・辻氏は「離れてたところでも管理できるようにするという、ただそれだけで働いている人の意識を変えることができるという例ですね」と中井氏の発言に加えた。
無駄なアラームに気付く
3つ目はKYOSO・辻氏も紹介していたパトランプの稼働状況をデジタル化する「IoT.kyoto SigTIA」の取り付け。

ここでは「IoT.kyoto SigTIA」に蓄積されたデータを分析することで、実は工場内で必要のないアラームが発生していたことが分かったという。
中井氏は「データをチェックし、現場で結果を共有したことで、無駄なアラームが発生しないようにするためにはどうしたら良いか、という意識が生まれました」と語った。
上記のような事例を紹介した後に、「実際に現場に働きかけ、データを可視化することによって、今まで現場が気にしていなかったような事にまで意識が及ぶようになった。」とスマートファクトリー化を進めた際の気づきについて述べた。
次ページは、「製造業におけるAI導入」
無料メルマガ会員に登録しませんか?

1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。