カーボンフットプリント(以下、CFP)を事業者間で共有する場合に、その値の算出方法および実際の計算プロセスが適切であることを保証する必要がある。
こうした中、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(以下、IVI)は、2025度に実施した実証実験の成果をもとに、トラストなデータ連携基盤(以下、CIOF)を用いたCFPの仲介サービスを、4月より本格展開すると発表した。
CIOFとは、IVIが2019年度から開発をスタートしたデータ連携基盤だ。インターネット上で流通するデータをトラストに交換するために、データ構成や項目のレベルまで定義し、それらを利用するサービスと共に事業者間で事前に契約として定めることで、トラストなデータ連携が可能となる。
これまでのCFPの計算では、外部のデータベース上で公開されたCO2排出原単位を用いるのが一般的であったが、これでは社内のCO2排出量削減に向けた取組みが反映されないという課題があった。
そこでIVIは、安価に実装可能なIoTキットを用いて、生産ラインから直接データを取得し、積み上げ方式でCFPを計算することでこの課題を解決した。
IVIは、積み上げ方式によるCFPの算出方法を2024年3月に提案しており、中小企業、大企業それぞれで実証実験を進めてきた。
参加企業の一社であるブラザー工業株式会社では、量産や多品種少量生産の現場で得られるデータを、輸出製品のCFP計算等に利用し、高い精度を達成したのだという。
さらに、CIOFを用いて協力工場間ともCFPデータを共有することが可能となり、双方のCO2コスト削減に貢献することを確認した。
ここで気になるのが、CFPを計算するために取得した生産現場の1次データを事業者間で共有する際の秘匿性だが、今回発表されたトラストなカーボンチェーンネットワーク(以下、CTN)サービスによる仲介で解決するのだという。
CTNサービスでは、CFPを事業者間で共有する場合に、その値の算出方法および実際の計算プロセスが適切であることを保証するために、第三者として工場の生産ラインで取得した1次データから、CO2排出量を計算するプロセスに介在することでその正当性を判断する。
これにより、工場をもつ事業者は、取引先との間で工場から得られる1次データを開示することなく、CFPのトラストな共有が可能となる。
つまり、事業者は取引先に対して、製造ノウハウを秘匿したままCFPの信頼性を示すことができるようになるのだ。

今後IVIは、実証実験の成果および新たに開始するCTNサービスの概要を、3月13日に開催されるIVI公開シンポジウムにて発表する。
また、同サービスをIVIメンバー企業には無料で提供することで、2025年度中に200社への展開を目指すとしている。
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