近年、地震、台風、大雨など、自然災害被害が増えてきたように思う。
中小企業庁の調べによると、1時間降水量50mmを上回る大雨の発生件数は、この30年間で1.4倍に増加しているのだという。
また、1995年から2017年にかけて、国が自衛隊などを通して被害に遭われた方を救助する災害救助法が適用した都道府県は、ほとんど全てが該当しており、地域によらず各地で自然災害が起こる危険性を表している。
日本は地形、地質、気候などの自然条件から、自然災害の発生リスクが高く、今後も気候変動や異常気象などによる自然災害が増えていくことが予想される。
そこで今回は、災害対策をテクノロジーの力で行なっている事例を紹介したい。
災害地にこそ必要な携帯電話基地局
まずKDDIと魚沼市、富士通が行なった災害対策の実証実験だ。
KDDI・魚沼市・富士通、災害対応向け「ヘリコプター基地局」を活用した通信手段確保の実証実験を実施
これは新潟県魚沼市銀山平において、小型携帯電話基地局を搭載したヘリコプターを用いて通信エリア外にある携帯電話の位置推定と、ヘリ基地局によりエリア化された範囲内での通話やSMSを利用することができるようにするという実証実験を実施し、成功したというものだ。
災害時、携帯電話サービスの提供が困難な場合も、ヘリコプター基地局が上空にいる1.6〜2.0km圏内であれば、通話、SNSなどの機能を使うことができる。
また、携帯電話の位置情報をヘリコプター側が取得することができ、被災者を特定することで救助に向かうことが可能となる。
携帯電話が大きなライフラインとなっている現在では、この実証実験の成功は大きな成果だと言える。
遠隔で災害現場に支援をしていく
これは防衛医科大・KDDI・Synamonが共同で行なった災害医療対応支援の実証実験だ。
防衛医科大・KDDI・Synamon、5GとVRシステムを活用した災害医療対応支援とリアルタイム遠隔医療教育に関する実証実験を実施
災害が起きたと仮定する場所に360度カメラを設置する。そして5Gを用いて災害現場の映像をVRに映し出し、VR空間内で医療従事者や消防機関が連携をし、災害現場に対して指揮・支援する、というものだ。
現場まで向かうのが困難であったり時間がかかってしまう際も、このようなシステムを利用できるようになれば、迅速な対応を現場に促すことができる。
また、医療、消防など、災害時必要な知見や人的リソースを集約させ、同じバーチャル空間で必要な情報をポップアップしながらやり取りができるということは、リアルで対応をするより効率が良い場面もあると推測できる。
今後は各避難場所に360度カメラを備蓄しているのが当たり前の将来がくるかもしれない。
災害対策を多用途に活用していく
これは阿蘇氏がNECの提供するデータ連携プラットフォーム「FIWARE」を活用して行なっている火山の災害対策だ。
阿蘇市と阿蘇火山博物館、データ連携プラットフォームで災害対策と観光振興を両立させたサービスに着手
この事例の特徴的な部分は、災害対策で取得しているデータを観光振興にも活用している点だ。
具体的には、防災情報の伝達を行えるよう、高感度フルHDカメラを阿蘇山火口に設置し、観測・監視を行っているのだが、この画像を用い、阿蘇火山博物館内のVRコンテンツとして阿蘇山火口の様子を楽しむことができるコンテンツとして活用している。
同様にドローンから取得した画像を平常時は観光用、緊急時には災害時の情報発信用のツールとして切り替えていくという実証実験も行なっているという。
また、このように災害対策を行っていることで、海外の観光客に対しても安心感を与えるという意味も持っていると考えられる。
阿蘇氏に住む住人と、インバウンド両方に必要な情報であり、見せ方を変えることで1つのデータをうまく使っている例だと言える。
このようにテクノロジーを活用した災害対策が徐々に社会に実装されていっている。今後災害が起きない環境づくりをしていくことが大前提ではあるが、万が一起きてしまった際の対応としてテクノロジーの活用は必須であると感じる。
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