必要なデータを最小限のコストで取得する工夫
藤原 大樹氏 MIRAI株式会社シニアエンジニア(以下、藤原): 現状取っているデータは、温度、湿度、二酸化炭素、流量、EC(電気伝導度)などです。電気伝導度は電気の通しやすさを表す指標なのですが、これを見ることによって培養液の中の肥料成分の濃度を間接的に見ています。
弊社の工場では、パネルをスライドして収穫していきます。手前のものを毎朝収穫し、奥の空いたスペースにまた苗を植えた新しいパネルをはめ込んでいきます。
こうすることで365日、毎日収穫することができます。ですからデータもすぐに集まります。
一方、パネルを動かすということは、データを取るべき対象物が移動してしまうということです。そこで現状は、野菜が通るポイントに定点でセンサーを設置しています。そして通過したことをモニタリングやゲートウェイの内部のデータ処理を工夫することで追いながら、どのパネルがどういう履歴を辿ったかを計算と作業データとを突き合わせて把握しています。
また、一番生育環境が厳しいと思われるポイントに重点的にセンサーを置き、一番生育が悪い箇所を是正していけば全体が改善されていく、という手法をとっています。
今後はコストをかけずに局所的な野菜の数値を測りたいと思っています。そのため、センサーの開発を行い、カメラを設置して画像認識を活用したモニタリング機能も実装する予定です。
クラウドのプラットフォームには、インフォコーパス社のSensorCorpusを用いていて、共同でプロジェクトを進めています。
小泉: デバイスも社内で開発・改造を行っているのでしょうか。
藤原: 現状センサー類は既存のものを使っているのですが、一部は自作、試運転しており、自社開発を進めているところです。
既製品でも、安い海外製のものはクオリティーが高くない場合があります。国内のメーカーのものはすごく精度がいいのですが、機能リッチで値段が高く、数を入れることができません。
ですからミドルレンジのものを現在自社で開発しております。インフォコーパスからもデバイスの会社の方を紹介していただいて相談しているところです。
そして、様々なセンサーを設置することで、新たな情報を見るという取り組みも試していきたいと思っています。
小泉: 現状取れているデータで、可視化することによって得られるメリットはどういったところなのでしょうか。
藤原: 「収穫量の予測」と「原因追求」の2点が大きなメリットです。
植物工場は比較的安定して収穫することができますが、生育過程の環境に応じて、多少なりとも収穫量が変動してきます。
大まかな収穫量の目安から、10%程度のブレが発生することがあります。その際、遡って温度や湿度などの変化から先々の収穫量の予測をし、起こった原因の追求をする、という両面があります。
小泉: なるほど。収量の予測をし、営業フェーズでどれくらいの量を出せるかという話をしなければいけない、というのが一点。
もう一点は、目標収穫量に対して、例えば95%の収穫だった場合、なぜ5%少なかったか、チェックするためにデータが活用されるのですね。
ちなみにこの工場全体ではどれくらいの収穫量があるのですか。
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