技術革新×データの重要性
野澤: もともとは1日1部屋300kg程度の収穫量でした。しかしSensorCorpusを導入している栽培室では400kgになりました。
収穫量が増えた直接的な理由は、デジタルそのものではなく、栽培技術を改良したからです。
具体的には主に光・空気・水(培養液)の三要素を変えました。
光は照明そのものを変え、培養液は環境数値の変更、空気であれば温度・湿度・風のコントロールを変えました。育て方も「こうあるべきだ」という考え方を逆転して栽培してみたら、大きく重さもあるグリーンリーフを収穫できるようになりました。
小泉: 左の技術改良をしたグリーンリーフは、大きさも重さも違いますね。この工場でしかこの大きさの収穫は行えないということでしょうか。
野澤: そこで必要になってくるのがデータです。
栽培技術の結果を、感性や直感という経験をベースに成り立たせたくはありません。属人的になってしまい、誰かがいなければならない状態になってしまうからです。
今後我々はこの装置やシステム、運営ノウハウを国内外で収めていくというビジネスも展開していきます。
ですから、栽培技術が定まったらそれを見える化し、第三者でも行えるようにしていく。現実をトレースし、分析をかけることによって将来どうなるか予測していく必要があると考えています。
小泉: そうすると、ある程度の特別な知識や経験は必要でも、その技術自体、特殊技能ではなくなってくる可能性もあるのでしょうか。
野澤: そうですね。ただ、やはり最後仕上げる「目」というのは人も必要です。データと人、両輪が揃うことで成長するビジネスだと考えています。
また、今後設備やノウハウを収めていく際に、経営の視点もとても重要だと思っています。
もともと私は営業として2012年旧みらい時代から働いていますが、2017年4月よりMIRAIの取締役社長に就任しました。営業から社長になって感じるのは、「経営側」「現場の生産者」「デジタル技術者」が、三位一体になることが必要だということです。
例えば、今までは何か問題が発生した際、データを見た技術者の主張と現場の生産者の主張が対立した時、最終的にはどちらかが折れるという状況でした。
それでは本来の問題に関係なく、その場の力関係によって物事が判断されてしまいます。経営者が指示や判断を下すのにも、現場を知らなければどちらの意見が正しいのかわかりません。
もちろん現場に入れるときは入りますが、入れない状況もあります。
例えば海外に設備を収めた場合はすぐには行けません。現場が海外にあり、現場の先のお客様と、現場の先の技術者がそれぞれやり取りを始めてうまくいってない時に、運営する責任者として話ができるかどうかが重要だと考えています。
小泉: 現地にいかなくてもノウハウの供給もできるわけですね。消費地に近いところに工場が建てばロジスティクスの費用も削減され、環境配慮にも良いですね。
インフォコーパスのSensorCorpusを導入したことでのメリットはどのようなことでしょうか。
野澤: インフォコーパスと出会う前は、経時変化のグラフはあるものの、「センサーの位置がどこにあるべきか」「培養液の交換をいつ行うべきか」「建物の電力使用量」など、様々なことをうまく見ることができていませんでした。
また、こうした(無線通信を遮断する可能性がある)鉄のラックや水がある植物工場で、どのような通信が適切なのか、我々も、既存ベンダーも分かっておらず、通信エラーが起きていました。
栽培技術に関しても我々が未熟だったこともあり、出てくる数字が良いのか悪いのかの判断も難しいという中、試行錯誤を行い、ようやく紐解きができてきた時にインフォコーパスさんと出会いました。
社内の中での基盤ができている状態で、柔軟性の高いSensorCorpusとの相性がとても良かったと感じています。
生産者としてノウハウを着実に貯めていき、それをベースに各ベンダーに協力してもらいながら設備を開発していかなければならないと考えています。
次ページは、「世界で必要とされる持続可能な社会づくり」
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