AIoT のパワーを解き放て―― AIとIoTを統合したAIoTを今すぐ導入すべき理由とは?

【後編】「製造業特化型」×「高速クラウド」のIoT基盤「FA Cloud」が始動、その全容と3社共同開発の狙いとは —FAプロダクツ、MODE、神戸デジタル・ラボ

“理想の工場”の姿が描けなければ、データは活きてこない

天野: 現場にはセンサーがたくさんありますが、問題はそのセンサーが何のために付いているかです。その際に重要になってくるのが、“理想の工場”をどう考えるかという上位概念です。

(上位概念の)一つは、マーケットを見て、売れる製品にデータを活用するということです。

工場では、利益が出る製品とそうでない製品、両方をつくっているのが普通です。そこで、市場を見ながら、売れる製品の場合のみセンサーを付けて必要なデータを取るという考え方です。いわゆる、経営管理ですね。

もう一つは、ものづくりがしやすいのか、しにくいのかという観点です。極端につくりにくい製品を設計してしまうと、工場で10個つくるのと1万個つくるのとでは難易度が全然違ってきます。1万個、不良品なく、組み立てやすくつくれなければいけません。そうした場合に、そのデータを設計側に返していくという思想です。

そうした上位概念から割り返していかないと、一つ一つのセンサーが何のデータを集めていて、何を担っているのかは、理解できません。その中で、僕らはセンサーの選定を何十年もやってきているので、「そもそも何をしたいですか」という目的に直結したセンサーを提案できます。

また、粒度や階層など、データをきちんと取るための“黄金律”みたいなものが、実は僕らの中にあります。

何百工場もセンサーを付けて分析していると、「これはおさえておかなければいけない」というポイントがわかるのです。それを、必ずしもお客さんの各工場がおさえているわけではありません。工場は、それぞれのノウハウのもとでやっていますから。

ユーザーさんが、「こういうデータを上げたい」と言っても、「本当ですか?」と返す場合もあります。僕らは“ファイナンシャルプランナー”みたいなものです。ユーザーさんが間違った保険の入り方や預金の仕方をしていると、「それだと50歳まで5,000万円貯まりません。もうちょっと外貨を入れましょう」といったことを、データにもとづいて提案できるのです。

上野: (プラットフォームにとって)現場のノウハウはとても重要です。今回のプロジェクトでは、FAプロダクツさんから事前にデータのフォーマット(サンプルデータ)をもらって、それにもとづいてシステムをすべて組んでいます。

【前編】「現場特化型」が日本の製造業IoTを加速、FAプロダクツ、MODE、神戸デジタル・ラボの高速クラウドサービス「FA Cloud」
(左)株式会社FAプロダクツ 代表取締役会長 天野眞也氏、(右)株式会社FAプロダクツ 代表取締役社長 貴田義和氏

小泉: 高速で動く産業機械の予知保全をする話と工場のラインのスループットを見ていく話というのは、一緒ではありません。データの粒度は違いますし、「データを見る」とひとことで言いますが、どういう時間単位でそろえて見るかなどで、まったく状況が変わってきます。つくっている製品でも違います。

その違いに応じて、都度設計を変えていかなければなりません。今回の「FA Cloud」は、そうした幅広い要望に応えるためのしくみということですよね。

貴田: そうです。IoTを活用する工場の業務には、設備の稼働監視や品質、在庫の管理などがあります。それぞれのアプリケーションの想定はできているのですが、「センサーに属性を付けるのが難しい」といったイレギュラーなことは当然あります。

そうしたイレギュラーもすべて「FA Cloud」上で処理する必要はありません。1個前の段階で処理してしまえばいい話です。要は、センサーの属性がわかる状態で「FA Cloud」にデータを上げてあげればいいだけの話なので、前処理はいかようにもなるわけです。僕らから言わせてもらうと、「(システムは)どうにでもなります」。

すべてのセンサーから、時系列も粒度も違うデータを直接クラウドに上げるかと言ったら、別にそんなことはしません。重要なのは、どんなアプリケーションを提供をするかということです。

こまかい粒度が必要なのは一つ、品質の管理だけです。すべてのデータを上げて、AIを使って答えを導き出すのか、それとも1個手前の段階で答えだけは導き出しておいて、その前後のデータだけをクラウドのデータベースに上げておくのか、という方法もある。要は、手法の問題だけなのです。

小泉: この分野が今後どうなっていくのか、とても気になります。

貴田: まずは使いやすいものをいったん入れて、文化を醸成することが大切です。私たちとしては、いまはやり抜くしかないタイミングだと考えています。

天野: データを分析する目的とは何だろうと、最近よく考えます。IoTは、手段/手法としてはとてもよいしくみです。ただ、お客さんの中には、上位概念、つまり理想の工場とは何かという解を持っていない場合が多いのです。

解を持っていない企業さんに対して、手段/手法がいかによくても、軸がずれてしまいます。その結果、投資に見合うかどうか、というだけの話になってしまう。モノを売る側としては、まず効果を見せたいのですが、そういう場が少ないのが現状です。IoTに限らず、FAやロボティクスの分野においても、僕らのテーマです。

小泉: (製造業のIoTに対する)社会的な要請がもっと強くなっていかなければなりませんね。

天野: 製造のトップの方が、その工場をどうしたいのか。あるいは、自社の製品をどのマーケットでどういう価値で勝負させたいのかが大切です。そこが決まり、「理想の工場をつくってくれ」と言われれば、僕らはつくれます。

本日はありがとうございました。

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