今後必要とされるIT人材とは、デジタル人材育成の現状

経済産業省は、2019年をピークにIT関連産業への入職者は退職者を下回り、IT人材は減少に向かうと予想しており、さらにIT人材の平均年齢は2030年まで上昇の一途をたどり、高齢化が進展することも予想されている。

その一方で、IT需要予測から推計されるIT人材需要との需給ギャップから、2030年までのIT人材の不足数を推計すると、労働集約業態となっている日本のIT人材の低生産性を前提とすれば、将来的に40〜80万人の規模で不足が生じる懸念があることも試算されている。

参考URL:経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 参考資料 (IT人材育成の状況等について)

そこで今回は、各企業、大学などが行なっているIT人材育成への取り組みの紹介をしたい。

産学医工連携で人材の育成を図る

まずは、GEヘルスケア・ジャパンと慶應義塾大学医学部・理工学部が連携して行なっている、AIサイエンティストの育成と研究促進を相互に支援しあう産学医工連携のプロジェクトについて紹介する。

GEヘルスケア・ジャパンと慶應義塾大学、AIデータサイエンティストを育成する産学医工連携プロジェクト始動

[参考記事] GEヘルスケア・ジャパンと慶應義塾大学、AIデータサイエンティストを育成する産学医工連携プロジェクト始動

プロジェクトが始動したきっかけは、デジタルトランスフォーメーションが各分野で進められる中、ビッグデータが集積されだしており、それを解析・活用していくAIデータサイエンティストのニーズが高まっているにも関わらず、不足しているという背景からだ。

また、優秀なAIデータサイエンティストであっても工学的な技術に特化していたり、医師がデータ分析の領域を研究するには臨床の中十分な時間を割けないということから、医療、工学、ビジネスという3つの視点から分析を行える人材はほとんどいないのが現状だという。

そこでGEヘルスケア・ジャパンと慶應義塾大学は、相互の人的、知的、物的資源の交流を推進し、その成果を社会実装していくエコシステムを構築していくとしている。

慶應義塾大学は医学部、理工学部に在籍する学生が自由な発想を行える環境の整備を行う。

具体的にはプロジェクトルームを慶應義塾大学病院内に設置し、「AI×画像診断」「AI×メディカル」といったテーマについての教育、トレーニングの仕組みを取り入れるとともに、研究のスピードと質の向上、論文・学会発表を促進する連携推進プロジェクトチームの発足、新しいアルゴリズムの製品応用および社会実装を実現していくのだという。

GEヘルスケアジャパンは、同社が持つオープンなデータ管理プラットフォームであるVNA(Vendor Neutral Archive)と、そのデータベースをオープンに開示するOCDB(Open Connect Database)、さらにデータ交換の高速化のためのDICOMweb技術を組み合わせてマルチベンダーと高速に接続し、臨床画像診断で活用する、という国内初の取り組みを開始している。

その第一弾としてPSPのビューワが接続され、慶應義塾大学病院にて臨床画像診断での利用が開始されており、今後も様々な連携を行なっていくことが想定される。

実データを活用して実践していく

次に紹介するのは、東芝が東京大学大学院情報理工学系研究科と共同で「東芝版AI技術者教育プログラム」を開発し、2019年12月より同社グループ内にてAI技術者の育成を行なっていくという発表だ。

東芝と東京大学、AI技術者育成プログラムを開発、2022年度までにAI人材2,000人を目指す

[参考記事] 東芝と東京大学、AI技術者育成プログラムを開発、2022年度までにAI人材2,000人を目指す

東京大学はすでに、東京大学と大阪大学を拠点校にして、「実データで学ぶ人工知能講座(AIデータフロンティアコース)」を、NEDOによる特別講座の一環として2019年3月23日〜2019年7月27日の間開催していた。

その際得た知見と、東芝がこれまでAI技術開発で培った知見を融合させて、新たに「東芝版AI技術者教育プログラム」を開発した。

このプログラムの特徴は、AIの手法を学ぶというだけでなく、実際に東芝グループが保有する現場のリアルなビッグデータを用いた実践演習を行う点だろう。

東芝はグループ内のAI技術者を、2022年までに現状の750人から2000人へ増強していくという目標を掲げている。

複雑性を増すネットリテラシー

最後に紹介するのは、LINE・メルカリ・警視庁・中央大学が、サイバーセキュリティ人材育成に向けて産官学連携を行なっていくという発表だ。

LINE・メルカリ・警視庁・中央大学、サイバーセキュリティ人材育成に向けて産官学連携

[参考記事] LINE・メルカリ・警視庁・中央大学、サイバーセキュリティ人材育成に向けて産官学連携

連携を行なった背景には、昨今の犯罪情勢がサイバー攻撃による情報流出事案、不正アクセス事案を始め、福祉犯罪、特殊詐欺などの犯罪もサイバー空間との関わりが強く、警視庁ではサイバーセキュリティの知識・技能を有した人材が必須になってきたという状況にある。

このようなサイバーセキュリティ人材を育成する上では、犯罪捜査や犯罪情勢の知見、学術研究、情報通信技術やリテラシー教育の知見の共有が必要であることから、産官学の連携に至ったのだという。

中央大学は2019年4月に「情報の仕組みと情報の法学の融合」をテーマとして国際情報学部を新設した。また、AI技術や通信技術、データサイエンスを扱うリテラシーを持った人材の育成と、法曹を中心としたプロフェッショナル人材の養成も推進していく方針だ。

メルカリはインターネット上での取引を行う企業として、2017年より全国の青少年や教育関係者を対象に講演活動を行っている。

また、2019年からはインターネットを通じた個人間取引におけるネットリテラシー教育用の動画教材を含むプログラムの開発にも取り組んでおり、実際に学校や家庭での教材として活用され始めているという。

LINEもネット上でコミュニケーションを行うという特徴から、2012年より青少年に対して、情報リテラシー・情報モラルの向上や、コミュニケーショントラブルを防止するためのネットリテラシー啓発活動を行なっている。

また、オリジナル教材を活用した全国での講演活動を実施しているほか、東京都教育委員会と共同で小中高生向けの「SNS東京ノート」も開発し、毎年更新を重ねながら都内公立学校の全児童・生徒向けに配布するなどの活動を行っているという。

こうしたそれぞれが行なってきた活動の経験や知見の共有を行い、連携・協力を推進することにより、新たな教育基盤や人材育成を行なっていくのだという。

このように各企業、大学、国、団体が連携しながら新たな人材育成に向けて動き出している。

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