抽象化によるネットワーク制御
小泉:オープンフローが開発された頃に言われていた「集中」とは、どのようなイメージのものだったのでしょうか。
例えば企業情報システムの中で一つ集中管理する人がいて、その管理者がそれぞれのルータを制御しているようなイメージでしょうか。
河野:はい。インターネットのような広大なスケールではなく、例えばデータセンター内や企業向けWANサービスの中など、ある程度決まった範囲での制御を行う、というものです。
オープンフローの重要な点は、それまで手動で行っていたネットワーク機器の制御や管理を自動化するプログラマビリティを獲得したことでした。
しかし、オープンフローは抽象度が低すぎて、細かくフローステートをプログラミングしなければいけなかったので、抽象度を上げる必要がありました。
そこで、「オープンフロー」から「モデルドリブン(モデルに基づきビジネス要件やソフトウェアの機能や構造をプログラムに落とし込んでいく開発手法)」の考え方にシフトする、ということがネットワークの世界で起こったわけです。
そこから、YANG(Yet Another Next Generation)やg NMI(gRPC Network Management Interface)と言われるモデル記述言語を使ってネットワークを制御しようということになったのです。(※編集注:YANGやgNMIの内容は割愛)
さらにそれを推し進め、より抽象化するにはどうしたら良いか、という発想から「インテントベースのアーキテクチャ(管理者の意図を自動的に機器に反映させることで運用を効率化しようというもの)」が主流になってきています。

小泉:端にいるネットワーク制御システムが少し自律的に動くようになってきた、という解釈で大丈夫でしょうか。
河野:はい、そうです。「自律分散と共存し、抽象度の高いプログラム言語で動くようになってきた」というのが、ネットワーク制御における流れだといえます。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。