5G時代のネットワークを知る -CISCO 河野氏インタビュー

データ中心による新しい世代の通信

小泉:近い将来、用途によってネットワークを使い分けるような装置をシスコが提供していくことになる、ということになりますでしょうか。

河野:はい。まだ途上ではありますが。すでに、マルチクラウドは実現していますし、マルチアクセスも、現時点では手動設定が必要ではありますが、ある程度は使い分け可能です。今後は、一貫性のあるポリシーの元、よりシームレスにマルチクラウド、マルチアクセスができるようになる予定です。

今後は、よりデータ中心指向の分散データシステムや情報指向ネットワークなどのシステムが推進する可能性があります。これまでの一様のインターネットでは、従来の通信方式以外の技術が普及することは困難でしたが、通信事業者がネットワークスライシングを提供することで、あるスライスだけは異なる技術を適用する、ということが可能になります。

小泉:リアルタイム通信が当たり前、という意識が広まって、初めて新しいプロトコルが必要とされるのかもしれないですね。

5G時代のネットワークを知る -CISCO 河野氏インタビュー
データ中心(data Centric)のネットワークへと移行する

河野:はい、ネットワークスライシングにより旧世代と新世代の通信が共存することも可能になるので、新しいデータ通信への移行契機になる可能性があると思います。また、データプレーンもSRv6(Segment Routing IPv6)という技術により、より柔軟な制御を、シンプルにステートレスに行えるようになってきました。

ネットワークの責任分界点

小泉:ところで、データ中心の通信というと、コネクテッドカーなどもプロトコルから設計すべきだと思います。

河野:そうですね。確かにコネクテッドカーのような例では、今までのコネクション中心の方式に引きずられることなく、車両からどのようなデータを収集するか、車両がどのようなデータを必要とするか、とデータ中心に設計すると、より効率的なネットワークシステムになると思います。

小泉:車両一台が一つのロールのようになっていて、データの特性に合わせてローカルではPeer to Peer(車なのでVehicle to Vehicle)であったり、集中管理用にデータセンターに通信したり、といったようなことも可能ということですよね。まさにIoE(Internet of Everything:シスコの提唱する概念)の世界ですね。

ところで、最近工場でのローカル5Gの利用が話題です。工場内にローカルに構築された5Gネットワークがダウンした際に、既存のネットワークでバックアップできないなどの懸念が出てくると思いましたが、この点はどうですか。

河野:ネットワーク構成自体も管理できるので、バックアップ回線含め、工場内のネットワーク全て自分ですることもできますし、通信事業者のマネージド・サービスとして提供を受けることもできます。また、データプレーンは工場にもっていくが、コントロールプレーンは通信事業者の設備を使用するといった構成も技術的には可能です。

小泉:なるほど。例えば工場のローカル5Gを非キャリアが作った場合でも、キャリアがマネージすることも可能ということですね。

河野:はい。データプレーンはローカル5Gに任せるけれども、シグナリング(通信サービスを提供するために必要な制御情報)は、既存のキャリアのネットワークを利用することも可能なので、運用の負荷やバックアップ、利便性を考慮して連携することがポイントになると思います。

小泉:そうすると、ローカル5Gのネットワークで問題が起きているのか、キャリアのネットワークの方で問題が起きているのか、はっきりしづらくなりそうですね。

河野:はい。それで「責任分界点を明確にすべきだ」という議論が起こるのですが、責任分界点もこれまでとは違う考え方が求められると思います。

例えば、固定電話の場合は責任分界点が明確にありました。それで、ユーザはホームフォンやターミナルアダプタなどを自分で購入し、接続することができました。しかしスマートフォンの場合、どこまでの責任が通信事業者にあるのか、スマートフォンのOSにあるのか、アプリにあるのかが曖昧です。

小泉:確かに境界は曖昧になっていますよね。スマートフォンだとある程度分かりやすいですが、工場のローカル5Gの場合に通信事業者同士の接続になると難しくなってきそうですね。

河野:責任分界のインタフェースを定義するだけでなく、誰が何をどのようにマネージするか、という観点が重要になると思います。システムが、通信事業者、クラウドサービス事業者、プラットフォーム開発者、アプリケーション開発者など複数のプレイヤーにより構成されることになりますので。

小泉:本日は、ありがとうございました。

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