ネットワークスライシングの可能性
小泉:5Gに伴いネットワークスライシング(ネットワークを仮想化し、ネットワークリソースを分割して用途に応じたサービスを提供する技術)も出来るようになってきています。
河野:5Gのネットワークスライシングについては、まだ通信事業者が検討中の段階ですが、技術的には可能です。5Gのような膨大なデータに関する、通信トラフィックにおいては、高いSLA(サービス品質保証)を必要とする顧客にはそのためのリソースをあてがう、などといった分割を行うと思います。
小泉:例えばですが、高速かつ高品質な回線は救急車が連絡を取り合うような緊急回線にあてがったり、緊急性の必要がないIoTデバイスには安価で速度の遅い回線を使用したり、という振り分けをするということですね。
河野:そうです。IoTではコネクションの数は増えると見込まれていますが、そこまで膨大なデータ量やリアルタイム性を必要としない場合もあります。一様の料金体系では無理があります。
ですからネットワークスライシング(以下、スライス)のサービスによって、IoT用の面と高信頼性を要する面を分けていくという考えに至るのは、自然なことだと思います。
小泉:ネットワークスライシングというのは、企業の中の通信でも用いられるのでしょうか。
河野:はい、企業用のVPNサービス(距離の離れた拠点同士を仮想的な専用線でつなぎ安全なデータ通信を行う仕組み)で異なるSLAを提供するという例はあります。

ただ、それも場合によっては安価で手軽に構築できるSD-WAN(拠点間をつなぐ広域通信網をソフトウェアによって統合、一元管理し、仮想的なネットワークを形成するソリューション)に取って代わられるケースもあります。そして同じような構図がネットワークスライシングにも当てはまります。
小泉:Peer Model(通信事業者が顧客の拠点間接続などのために専用的にネットワークを貸与するモデル)ではなくOverlay Modelを適用する、というような構図がネットワークスライシングの領域でもある、ということですか。
河野:そうです。今後通信事業者によってIoTや特定の業界向け専用のスライスなどができてくると思われます。しかしまだ時間はかかりそうなため、それまでにSD-WANのようなサービスが普及する可能性があると見ています。
今考えている「モバイルSD-WAN」というサービスでは、データやアプリケーション特性に応じたトラフィックスティアリングや,5G, LTE, Wi-Fiなどのアクセスネットワークの選択を可能にします。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。