内田洋行ビジネスITフェア2024

百聞は一見にしかず、オートデスクがみせるデジタルツインの現在と未来

「ジェネレーティブデザイン」のよさは、設計と製造をつなげること

小泉: 新しい設計手法である、「ジェネレーティブデザイン」について教えてください。

加藤: 「ジェネレーティブデザイン」は、重さや強度など必要な条件だけをインプットすれば、コンピュータが最適なモノの形状や構造を提案してくれるソリューションです。オートデスクでは、「Autodesk Fusion 360」というソフトウェアでその一部を利用できます(年間利用料:約6万円、ジェネレーティブデザインの計算と形状出力には別途費用が必要)。

「ジェネレーティブデザイン」の特徴は、人間が考えつきもしないようなモノの形状を導き出すことです。それは、自然界にある形状に似てくる傾向があります。たとえば、哺乳類の骨の形です。自然界の生物たちは、途方もなく長い年月をかけて進化してきました。その結果できた形状は、やはり優れたもののはずです。ですから、「ジェネレーティブデザイン」によって最適化した形状がそれに似てくるというのは、必然的なのだと考えられます。

小泉: なるほど…。

百聞は一見にしかず、オートデスクがみせるデジタルツインの現在と未来
左は「ジェネレーティブデザイン」でつくったドローンの機体で、右は哺乳類のムササビだ。ジェネレーティブデザインが導き出すモノの形状は哺乳類の骨格に似る傾向がある。

加藤: 人間が考えだせるモノの形状の数や種類には限界があります。固定観念もあります。しかし、「ジェネレーティブデザイン」では、AIとクラウドを用いることで、何百、何千通りのオプションを提示することができます。

ここで、重要なのは人間の役割です。私もいつも気をつけてお話するようにはしているのですが、「ジェネレーティブデザイン」がもたらすこの自動化のプロセスは、「人間がいらなくなる」という印象を与えてしまいがちです。

しかし、コンピュータにできることはまだまだ限定的です。オートデスクが提供する「ジェネレーティブデザイン」の価値は、あくまで色々なバリエーションを人間に対して提案することにあります。その中から、最後は人間が最適なモノを選びだす必要があります。

「ジェネレーティブデザイン」と言っても、使い方はさまざまです。オートデスクでは、その使い方の違いによって3種類のソフトウェアを提供しています。

一つは、ある程度の形状が決まっている段階で、部分的にコンピュータの力を借りて完成度を高めたいという場合です。二つ目は、利用目的と外形は決まっているけれども、内部だけ軽量化したい場合。そして三つ目が、質量や強度などの最低条件を与えて、コンピュータの力を存分に発揮してもらうパターンです。

二つ目の「軽量化」の例をお見せします。これはクルマのサスペンションです(下の画像)。一般的に、こうした部品は過去の経験や実績から、形や厚みなどがある程度決まっているものです。

百聞は一見にしかず、オートデスクがみせるデジタルツインの現在と未来
「Fusion 360」に表示された自動車のサスペンション。これを「ジェネレーティブデザイン」によって軽量化していく。
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「Autodesk Netfabb」というソフトウェアを使って、自動車のサスペンションの軽量化を進めている様子。

それに対して、「ジェネレーティブデザイン」によって要らない部分をどんどん削除していき、軽量化を進めていきます(上の画像)。赤色が構造的に負荷のかかりやすい部分です。緑色は負荷がかかりにくいですから、その部分を削っていきます。

このように空洞のある構造は、人間の骨の内部の構造に似ているそうです。骨密度という言葉がありますよね。人間も軽量化のためだと思うのですが、骨の内部は空洞になっていて、それでも負荷に耐えられるように最適化された構造になっています。

しかし、「ジェネレーティブデザイン」によってできた形状を、実際の設備でつくれるかどうかが問題です。もし、自前の生産設備でその形状がつくれないのであれば、自前の設備で加工できるように、再度、設計を変える必要があります。

小泉: そうですよね。それは、御社のソフトウェアで設計の方にフィードバックする機能もあるのですか?

加藤: ええ。Fusion 360のいいところは、クラウドを使っていることです。設計者がクラウドにデータを入れておけば、加工する人がそのデータを使ってシミュレーションし、「これならできる」とか「こうしたらいい」といった逆提案ができます。クラウドの中で、設計から生産までの一連のコミュニケーションが可能になるのです。

小泉: なるほど。それは素晴らしいです。

加藤: あるいは、まだお試し機能なのですが、Fusion 360のソフトウェア上で加工方法を色々と検討できるようになっています。現時点では定義しない場合がデフォルトで、「3Dプリンタ」を加工法に選んでシミュレーションすることができます。そこに、今はテクノロジープレビューというお試し機能として、工作機械の「3軸加工」と「5軸加工」という選択肢が追加されています。

小泉: 工法を考慮したデザインを提案してくれるということですね。

加藤: ええ。これがもう少し発展すると、たとえば次のようなことができます。ある工場で、本来は5軸加工機でしかつくれない製品の受注があったが、5軸は稼働がいっぱいで空きがない。ただ、3軸加工機は空いている。こうした場合、本来であれば受注をあきらめるところです。

しかし、さきほどの「ジェネレーティブデザイン」の機能を使って3軸でつくれるように設計を変えれば、「今からつくれます!」ということが可能になります。これが、初めに申し上げた「Push Button Manufacturing」と言われる新しいものづくりの世界観です。

小泉: それは素晴らしい。工場へ行くと、実は使っていないという設備がたくさんありますからね。

加藤: そうなんです。せっかく最新の加工機が導入されて、今までより精度が2倍まで出せるというのに、設計がそのことを知らないために機会損失になっているような場合もありますから。

やはり、これからのものづくりは設計と製造が密にコミュニケーションできることが重要だと考えています。ジェネレーティブデザインはそのための有用なツールとなります。

※オートデスクの「ジェネレーティブデザイン」についてはこちらの記事も参照。
「ジェネレーティブデザイン」がもたらす自動化の再定義 ―Autodesk University Japan 2018

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