条件は一つ、「社会課題の解決」の軸は絶対にぶらさない
小泉: 四家さんは、「オープン化」に至る取り組みの中で、これまでの事業とは違った点や新たにお気づきになった点は何かありましたか?
四家: 私が確信したのは、「ぶれてはいけない」ということです。私たちのこれまでの取り組みは、一貫して「社会的な課題を解決する」ということ、「安全で、生産性の高い、スマートな未来の現場」を1日でも早く実現するということです。
その目的に対する手段は色々と変わりますが、そこは走りながらやっていけばいいんです。ただ、「社会課題を解決する」という姿勢は絶対にぶれてはいけない。そのためにはコマツだけで解決する、あるいはコマツだけで囲い込むという考え方は一切排除しました。
「社会課題を解決することが目的なんだ」としてぶれずに進めていけば、目的に到達するスピードは速いし、結果として参加してくれている方々もきっと幸せになるのだと私は思います。
小泉: すごいです…。普通は、なかなかそのような考え方にはならないと思います。
四家: 弊社の両トップ(取締役会長 野路國夫氏、代表取締役社長/CEO 大橋徹二氏)も同じことを言います。「社会課題の解決からぶれてはいけない。お客様の現場を、安全で、生産性の高い、スマートな未来の現場にすること。そのためにはコマツだけが囲い込むのではない。そうすれば、最初の絵と結果は違うかもしれないが、それは結果として進化してるはずだ」と。
必ずしもコマツの社員全員が理解しているわけではないと思います。ただ、会長から言われたのは、「わからないところがいいんだ。6万人(コマツグループの社員規模)がわかる話をしていても仕方がない、わからないことをやることが重要なんだ」ということです。
「KOMTRAX」はクローズドなシステムで、その目的は我々の建機をたくさん売ること、部品やメンテナンスをたくさん受注することに留まっています。
一方、ある意味でその対極にあるのが今回の「オープン化」であり、目的は「コマツの建機を使うお客様だけでなく、全てのお客様の現場での課題を解決する」というところに行きつきます。
ただ、オープン化の目的を社内で説明するのはものすごく大変ですよ。「何のためにコマツがそれやるんだ」と訊かれても、「コマツのためではない」と私は答えます。「じゃあ誰のためなんだ」と訊かれると、「お客様のためです」と答えます。理解不能でしょうね(笑)。
小泉: (笑)。でも、それを「理解」してしまうというのもまた違うのかもしれませんね。
八子: だから、スピードが大事なのかもしれませんね。ゆっくり説明し、説得をしていると、どこかで話が合わなくなってきますから。
昨年の3月にオープン化するという話を四家さんからお聞きして、それから1週間後にはJV(ジョイント・ベンチャー、今のLANDLOGのこと)をつくるかもしれないと言われ、驚きました。「本当ですか?それを7月に発表するんですか」と。でも、その時にはどの企業がランドログに参画するのかも決まっていたんです。これはとんでもないスピードで進んでいるなと、衝撃を受けました。
(後編はこちら)
※1 目指すのはエコシステムによる協創、ランドログが建設生産プロセスの変革を加速するパートナー制度「LANDLOG Partner」の提供を開始
※2 コマツのスマートコンストラクションがわずか8か月で実現できたわけーコマツ 四家氏、シスコ 八子氏 対談
※3 コマツが仕掛ける、IoTプラットフォーム「LANDLOG(ランドログ)」。その思惑と、スマートコンストラクションの現状 -コマツ 四家氏インタビュー
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。