工場ロボットの最先端 ー羽田卓生氏に聞く、ロボット最前線③

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ロボットが生活にも、産業にも入り込んできていて、どんどん身近なものとなってきている。そこで、特集「ロボット最前線」では、ugo COOの羽田卓生氏とIoTNEWS代表の小泉耕二が対談した。

特集「ロボット最前線」は全六回で、今回は第三回目、「工場ロボットの最先端」がテーマだ。

羽田卓生氏は、ソフトバンクに入社後、携帯電話の雑誌編集、通信部門でのコンテンツ開発や端末開発を経て、ロボット事業を展開するアスラテックの立ち上げに参画。同社でロボット関連事業に携わり、AI(人工知能)関連やロボットの会社に在籍した後、現在はugoでCOOとして事業開発を担当する。

ugoは、主に、双腕(両腕)を使って様々な作業ができるロボットを開発しており、建物の点検業務や警備業務で利用されている。同社は工場でパーツを運んだり、工程の進捗を確認するロボットの提供も行っている。

IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): 3つ目のテーマは、「工場で働くロボット」の最前線についてです。工場は、以前からロボット化が進んでいると言われています。私が知る限りでは、自動車の工場などの大量生産で決まった作業を行う現場では、ロボットが活用されています。

一方、多品種少量生産を行っている工場では、様々な種類のモノを少しずつ作る必要があるため、人が作業した方が柔軟に対応できるという風潮も感じます。工場で働くロボットの現状を教えててもらえますか?

羽田卓生氏(以下、羽田): 工場で働くロボットは、様々な種類が出始めています。今回は、その中から、2つの事例を紹介します。

大林組の工場で活躍するugoの点検ロボット

羽田: 1つ目は、建設会社の大林組に導入されている、私たちugoの点検ロボットです。このロボットは、工場を見回ります。大手の建設会社は、多くが自社工場を保有しており、建設機械のメンテナンスをしたり、改造をしたり、オリジナルの機械を作ったりしています。

工場ロボットの最先端 ー羽田卓生氏に聞く、ロボット最前線③
大林組に導入されているugoの点検ロボット

大林組も自社工場を保有しており、ugoでは、その工場を点検するロボットを提供しています。ただ、工場なので敷地が広いことや、感染症対策の一環として出社制限があるなど、様々な課題があります。そこで、ロボットが人の代わりに点検を行っています。常時点検も行います。そして、必要な時に後からデータを確認することも可能です。

小泉: 主にどのような点検を行なっているのですか?

羽田: 現状は、ロボットに搭載されたカメラで撮影した映像を使って、現場の状況や進捗の確認を行っています。

小泉: 映像を見て判断しているのは人ですか?

羽田: そうです。遠隔でロボットを操縦することや、声をかけることもできます。操縦者の声をそのまま伝えることもできますし、定型文などを活用してロボットがしゃべることもできます。

工場ロボットの最先端 ー羽田卓生氏に聞く、ロボット最前線③
ugoのロボットを、遠隔から操作している。

小泉: だんだん近未来感が出てきましたね。大林組は、なぜ、ugoのロボットを選んだのですか?

羽田: ひとつは、すぐに現場に導入できる点です。ロボットを現場に運んだ日から動かすことができるのです。また、拡張性があるので、追加したい機能があればシステムを改造することができます。

小泉: ロボットの本体自体は決まった規格があるため、注文すればすぐに届く。また、中にソフトウエアを組み込めるようになっていて、自分たちで改造することも、できるわけですね。

羽田: そうです。外部システムとの連携が簡単にできます。

小泉: 映像に対するAIの搭載もされているのですか?

羽田: 簡単なAIの導入は行っていますが、現場によってニーズが異なるので、AIも必要なものを組み合わせることができる仕様にしています。

小泉: ソフトウエアを入れるような感覚でAIを入れることができるので、例えば、画像認識のAIであれば、見たものに対して判定ができるわけですね。

羽田: 言い方を変えると「動くエッジコンピュータ」です。

小泉: カメラが付いたコンピュータが動いているという発想ですね。また、手があるので、ロボットとしての機能もあるわけですよね?

羽田: そうです。例えば、エレベータだけではなく、機械装置のボタンを押すといったことや、物をつかんで持ち帰ることもできます。

工場ロボットの最先端 ー羽田卓生氏に聞く、ロボット最前線③
モノをつかむことができるugoのロボット

小泉: それは様々なシーンに応用できそうです。何か問題が発生した際に、緊急停止ボタンをロボットに押してもらうことなども可能になりますね。

羽田: 実際にそうした検討をしてもらっている現場もあります。例えば、夜間は無人で運用している現場で、夜中に機械が止まってしまった場合でも、ロボットが復旧ボタンを押してくれれば生産性を落とさずに済みます。

小泉: スターウォーズのロボットぐらいことをやれそうな気がします(笑)。

羽田: このように、ロボットは様々なことが、できるようになってきています。ただ、現状ではロボットやAIに全てを任せるのは難しいので、人が介入できる余地を大きくしている点が、導入してもらいやすいポイントになっていると思います。

工場内を動き回る安川電機の「人協働ロボット」

小泉: ほかにも工場で働くロボットの事例はありますか?

羽田: 少量多品種や変種変量生産を行っている工場をキャッチアップするためのシステムは、ロボットメーカからも出始めています。その事例として、安川電機のロボットを紹介します。

工場のロボットというと据え置きで、高速で動いているイメージがあります。しかし、このロボットは、ロボット自体が動くことで、柔軟にいろいろな仕事を行って、製品を作っていくという発想です。

工場ロボットの最先端 ー羽田卓生氏に聞く、ロボット最前線③
安川電機の人協働ロボット。各ロボットが動きながらモノを作ったり、運んだりしている。

これは「協働ロボット」といわれるものです。これまでは、機械と人が働くエリアは区切られていましたが、今後は、そのエリアの境が曖昧になっていくと思います。

小泉: 通常、工場の生産現場のロボットは、人にぶつかるなどの危険もあるので、柵やテープで囲われていたり、センサで人を検知したら止まったりしていましたよね。協働ロボットの場合でも人とぶつからない仕様にする必要があると思いますが、近づいたら止まるのですか?

羽田: センサを搭載しているので対応する場合もあります。ただ、ぶつかったことを判断して止めるという対処を行うことが多いですね。

小泉: なるほど。2つの事例から工場で働くロボットは今、様々なものが登場しているということが分かりました。(第4回に続く)

この対談の動画はこちら

以下動画の目次 3)工場で働くロボット(26:40〜)より

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