ロボットフレンドリーという視点の重要さ ー羽田卓生氏に聞く、ロボット最前線④

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ロボットが生活にも、産業にも入り込んできていて、どんどん身近なものとなってきている。そこで、特集「ロボット最前線」では、ugo COOの羽田卓生氏とIoTNEWS代表の小泉耕二が対談した。

特集「ロボット最前線」は全六回で、今回は第四回目、「ロボットフレンドリー」がテーマだ。

羽田卓生氏は、ソフトバンクに入社後、携帯電話の雑誌編集、通信部門でのコンテンツ開発や端末開発を経て、ロボット事業を展開するアスラテックの立ち上げに参画。同社でロボット関連事業に携わり、AI(人工知能)関連やロボットの会社に在籍した後、現在はugoでCOOとして事業開発を担当する。

ugoは、主に、双腕(両腕)を使って様々な作業ができるロボットを開発しており、建物の点検業務や警備業務で利用されている。同社は工場でパーツを運んだり、工程の進捗を確認するロボットの提供も行っている。

IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): 先日、経済産業省の人から「ロボットフレンドリー」という面白いアイデアを聞きました。これは「ロボットが働きやすい環境を整えましょう」という概念です。つまり、「ロボットのために人が寄りそう」という考え方です。

この考え方の原点は、お掃除ロボットです。お掃除ロボットを購入した家庭は、自動で部屋の隅々まで掃除してほしい。しかし、家具の足が短いと、家具の下は掃除することができない。そこで、ロボットが掃除をしやすいように、家具を足が長いものに買い換える現状が起きているそうです。

ロボットフレンドリー ー羽田卓生氏に聞く、ロボット最前線④
お掃除ロボットが通れる家具で家を構成する。 出典:iRobot Japan

これがまさに「ロボットフレンドリー」です。製造現場では、正確性を問われるロボットが多いため、全てをロボットフレンドリーにすることは難しいかもしれません。

しかし、正確性や高速性を全てロボットに求めると、1台あたりのコストが高くなってしまいます。そこで、ある程度は妥協するわけです。私は、このアイデア、すごく面白いと思ったのですが、羽田さんはどう感じますか?

ロボットを導入しながら環境を変え全体を最適化する

羽田卓生氏(以下、羽田): 新しい道具のために環境を変えることは必要だと思います。現状を変えずに、何かの置き換えでロボットを導入するという発想は、改善として初期段階です。新しい道具が生まれ、それを活用するために全部を最適化し直すというのが、一番高度な改善方法だと思います。ただ、それはそれでとても大変なことです。

ですから、まずは、ある部分の置き換えとしてロボットを導入するところから始め、徐々にロボットのために環境を変えていきながら、全体を最適化していくという流れの、ちょうど間に「ロボットフレンドリー」という概念が合うのではないかと感じました。

ロボットフレンドリー ー羽田卓生氏に聞く、ロボット最前線④
ugo 羽田卓生氏

小泉: 自動車の工場では、巨大なロボットが自動車のドアなどを持ち上げて作業をするので、ロボットを導入する前提で工場の設計が必要です。また、そうした規模感でのロボット活用なら、ロボットのために工場を作り替えることもあります。

しかし、その前の過渡期には、ロボットフレンドリーという考え方が必要だと思います。そうして、生産を続けているうちに、ロボットの性能も上がってきて、フレンドリーにしなくても高いクオリティーで自動的に動くものが登場してくる可能性もありますよね。

羽田: そうですね。今後はロボットやAI(人工知能)を導入しないという選択肢はないと考えています。人材不足は避けられないため、現在の労働力を人で補うには限界がきます。これまでに発表されている様々なレポートでも、ロボットを導入している企業と導入していない企業では、倍ぐらいの差が開いているという結果が出ています。

そして、これはAIでも同じことが言われるようになると思います。さらに、その先には、AIとロボット両方導入した企業と、どちらか片方だけの導入の会社で差があると言われる日がくるでしょう。

自動車メーカーの産業ロボット導入は進んでいるという話がありましたが、導入当初は苦労していたそうです。以前、自動車メーカーの、技術系の役員だった人に、産業ロボットが導入された当時の話を聞くと「とても大変だった」と話していました。

産業ロボットが、まだ黎明(れいめい)期の時代ですから、まともに動かず、塗装するロボット同士が塗装し合っていたそうです(笑)。そういった思い通りに動かないロボットを、いかに使いこなすかが重要なのだと思います。ある意味、野生の馬を乗りこなすようなことをやってきたからこそ、自動車産業は発展していると感じました。

小泉:そういう意味では、安川電機の事例(第3回)で紹介してもらった、人とともに働くロボットは出たばかりということで、これからに期待がかかります。

自動化が遅れる製造業も導入は待ったなし

羽田: 新しい道具を導入すると、必ず様々な課題が出てきます。ですから、先駆けて今やるのか、もう少し浸透してきてから導入するのか、これは様々な判断をする必要がありますが、そろそろやらざるをえないタイミングに来ていると思っています。

ロボットフレンドリー ー羽田卓生氏に聞く、ロボット最前線④
左:IoTNEWS代表 小泉耕二 右:ugo 羽田卓生氏

小泉: 製造業で、あまり自動化やロボット化をしてこなかった領域でも、そろそろ導入し始めた方がいいということですね。

羽田: 場合によっては、生産性を犠牲にしても、人の人数を減らしてでも、無人で生産可能な方向に向かった方がよいなど、様々な考え方が出てくると感じています。

小泉: 工場で働くロボットの最前線(第3回)では、最前線の技術は出てきているが、まだ未成熟なので、これからに期待する段階ということでした。ただ、これまで全く自動化を進めてこなかった産業では、やるかやらないか、それぞれの判断があるにせよ、手をつけ始めた方がいいのではないかということですね。

一方で、現在、自動化を推進できていない産業は、売り上げがないから投資ができないという根本的な問題があるといいます。

だから、業界全体で共通する領域に対して必要な産業ロボットを作り、それをリースする仕組みを作ったり、金融政策を加えたりしながら、なるべくコストをかけずに自動化できるような体制作りも重要になります。共通の課題を業界全体で改善していくというアプローチです。

ロボットフレンドリー ー羽田卓生氏に聞く、ロボット最前線④
IoTNEWS代表 小泉耕二

羽田: ロボットは高価なものなので、動かしている時間が長ければ長いほど良い。基本的には使い倒した方がよいのです。ただ、ひとつの企業だけで使いきれないなら、共同で使うことを考えるのは正しいことだと思います。

小泉: 「ロボットフレンドリー」という言葉をきっかけに、ロボットのコストが下がるのを待つだけではなく、ロボットメーカーの研究開発費を補いながら、利用者も安く使うことができれば、産業全体が発展していきそうな期待が持てると思いました。(第5回に続く)

この対談の動画はこちら

以下動画の目次 ロボットフレンドリーという視点(34:13〜)より

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