AIoT のパワーを解き放て―― AIとIoTを統合したAIoTを今すぐ導入すべき理由とは?

DXで儲ける視点1「場を創造する」 ー小野塚征志氏に聞く、デジタル時代の新しい儲け方④

企業:

DXという言葉を聞かない日はないが、実際、DXをして儲けた企業があるのだろうか?という疑問を持つ人は多い。その疑問に応えるべく、特集「デジタル時代のあたらしい儲け方」では、ローランド・ベルガー パートナーの小野塚征志氏とIoTNEWS代表の小泉耕二が対談した。

特集「デジタル時代のあたらしい儲け方」は全八回で、今回は第四回目、DXで儲けるための4つの視点の一つ目の視点である、「場を創造する」がテーマだ。

小野塚氏は、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。日系シンクタンク、システムインテグレーターを経て、現在、ローランド・ベルガーでパートナーを務める。2022年5月19日には「DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略」を上梓した。

ローランド・ベルガーは、戦略系のコンサルティング会社。企業の中期経営計画の策定、企業の買収、リストラなど、企業が経営戦略でな大きな意思決定を行う際のサポートを行っている。

IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): 前回、話した4つの項目(第3回)で、まずは1つ目の「場を創造する」について詳しく教えてください。

ローランド・ベルガー 小野塚征志氏(以下、小野塚): これまで話したYouTube(ユーチューブ)が、一番わかりやすい例ですね。ほかにも、Instagram(インスタグラム)やFacebook(フェイスブック)、LINE(ライン)など、ソーシャル系のサービスが一番イメージしやすいと思います。

小泉: そうですね。場を作るというと、アメリカのインターネット企業がパッと思い浮かびます。YouTubeもグーグルなのでアメリカの企業ですが、場を作っている日本企業もあるのでしょうか?

職人と工事会社を結ぶ場を作った助太刀

小野塚: もちろんあります。本の中で取り上げている中でいうと、「助太刀」という会社になります。この会社は、工事の現場で働く職人と、職人を集めたい工事会社をマッチングするサービスを展開しています。これまで職人の世界では、仕事は紹介に頼るほかないのが実情でした。

小泉: 口聞きしてもらって、知り合いなどの人伝いで探していたということですよね。

小野塚: その通りです。工事現場で働く職人の方は、土管を引く作業や壁塗りをする作業など、それぞれの作業ごとにプロフェッショナルな人がいます。つまり、壁塗りの職人は土管を引くことが必ずしも得意というわけではないのです。

そのため、元締めの工事会社も、適切な職人を適切な期間に雇用するには知り合いから紹介してもらうというという選択肢しかありませんでした。つまり、基本的には、いつも同じ職人を雇い、職人もいつも同じ工事会社から発注を得るという、極めて閉じた世界だったのです。

そこで、助太刀は、職人と工事会社を結ぶマッチングアプリを作りました。そのアプリに工事会社と職人が登録することで、工事会社は必要なスキルを持った職人を集める、職人は複数の工事事業者から自分たちに合った仕事を受注することができるようにしたわけです。

場を創造する ー小野塚征志氏に聞く、デジタル時代の新しい儲け方④
助太刀のサービス概要

ただ、こうしたサービスでは、場を作っただけで終わらせない方が、可能性が広がります。例えば、この助太刀では、こうしたマッチングサービスに加えて、立て替え払いをしてくれるファイナンスサービスも提供しています。工事の世界でも、普通の民間事業者と同様、発注を受けてから実際に代金が支払われるのは通常1カ月後です。

小泉: 法人同士の取引は絶対にそうなりますね。

小野塚: 職人は基本的には個人事業主です。しかし、急きょ、おカネが必要になった場合でも助太刀を活用した取引をしておけば、立替払いをしてもらえるのです。

ほかにも、職人向けの保険など、いざというときのサービスを提供しています。単なるマッチングだけではなく、付加サービスも提供することで、継続的に助太刀を活用して仕事を受注してもらえるようにしています。

小泉: 助太刀のサービスはプラットフォームビジネスだと思います。確かにプラットフォームを作ったら儲かりそうな感じは理解できます。しかし、上手くいった事例はあまり見たことがありません。

上手くいっているのは、建築といった、元々あまりデジタル化されてない業界に、どっぷりつかっていた人たちが便利と感じるサービスを提供している事業者だと思っています。

場を創造する ー小野塚征志氏に聞く、デジタル時代の新しい儲け方④
IoTNEWS代表 小泉耕二

小野塚: その通りです。みんなが思いつくSNS的なサービスは、世界中で通用するものであるために、大資本を入れてグーグルやFacebookを提供するメタ(旧フェイスブック)にみたいになろうという発想にどうしてもなりがちです。

しかし、元々極めてアナログな世界であればあるほど、ちょっとしたことでも飛躍的な効果を実感できます。また、アナログな世界であればあるほど、国境をまたぐのが難しいという特徴もあります。例えば、工事の監修は、国によって全然違います。

小泉: そうですね。建築基準や法律が違いますからね。

小野塚: アナログで国境をまたぐことが難しい世界の方が、わかりやすく価値を感じてもらえるし、グローバルな大企業が参入してくることがありません。きちんと地に足がついた、DX(デジタルトランスフォーメーション)のプラットフォームビジネスを始めやすい領域という言い方ができると思います。

小泉: つまり、ローカルな法律や制限があったり、言語の問題であったり、グローバル化されづらい領域のビジネスであることがポイントになる。しかも、現場の作業はアナログで行われていて、人間関係で仕事のやりとりをしているようなビジネスは、極めてやりやすいということですね。

自動車整備士の訪問サービスを展開するSeibii

小野塚: その方が着実に広がっていく印象があります。そのほかにも、「場を創造する」という事例で、自動車整備を行う「Seibii(セイビー)」という会社も取り上げています。

この会社も、自動車整備のちょっとした困りごとに目を付けています。通常、自動車整備を頼む場合には、恐らくディーラーに持っていってチェックをしてもらいますよね。

また、何か新しい機器を付けてほしい場合には、ディーラーか、近くの工場に持っていきます。ただ、ディーラーに行っただけでは、すぐには終わりません。何時間かかりますと言われて、その間にいったんは帰宅するなどして、またディーラーに来なければならないとなると、面倒くさいですよね。

そこで、Seibiiは、整備士が家まで来てくれるというサービスを提供しています。大型の機材が必要なもの以外、例えば、カーナビを取り付ける程度の作業であれば、大した機材がなくてもできるわけです。それならば、整備士が家まで来てくれた方がよっぽど便利ですよね。そして、整備士も、Seibllからダイレクトに報酬がもらえるのです。

小泉: めちゃくちゃよいですね(笑)。私も先日、車をディーラーに持って行ったら、ディーラーから整備工場に持ってくのに、順番待ちで3日、整備工場に行ったら作業待ちで2週間かかると言われました。作業自体の時間を聞いたら「3時間です」との答えでした。そういう話は普通にあります。

小野塚: そもそもディーラーに車を持ち込んだら、家に帰るための車がないわけです。そして、代車を借りるのに料金を払うケースもあります。

小泉: それもディーラーが近くのレンタカーから借りてくるだけなのに、結構高いです。

小野塚: だから、整備士が家まで来てくれるならよいですよね。そうした、ちょっとした身近な困り事を放置せずに、デジタルでの解決方法をいかに見つけられるかということです。私は、いろいろな所に掘りどころがあって、チャンスだと思っています。

場を創造する ー小野塚征志氏に聞く、デジタル時代の新しい儲け方④
ローランド・ベルガー 小野塚征志氏

小泉: プラットフォーマーになりたい人たちは、よい市場を見つけて勝負した方がいいということですね。そして、働く側の人は、自分の技術を磨きつつ、働いている時間をきちんとタイムマネジメントしないといけない。タイムマネジメントができれば、空いている時間を提示して、その時間を売ることができるわけですね。

「耳の長いウサギ」になれ!

小野塚: もうひとつは、そういう人たちには、「耳の長いウサギ」に、ぜひなってほしいと考えています。自動車整備士であれば、Seibiiの存在を知らなければ、普通に工場で働く以外にありません。Seibiiの存在を知って、実際に登録して体験する人しか、新たな儲けを生み出すことはできないのです。

小泉: 私はタクシーでそれを思いました。DiDi(ディディ)のような配車サービスを活用している運転手と、していない運転手がいます。空いているときだけ「オン」にすれば、配車サービスから仕事を取れるのに、何も導入せずに、これまで通りにただ流しているタクシーを見ると、「導入すればいいのに」と思います。

小野塚: そうですね。プラットフォーマーになる必要は必ずしもなくて、上手く使いこなす、あるいは存在を早く知ることが大事だと思います。

小泉: どうやったら耳の長いうさぎになれますか?

小野塚: まずは、この本をぜひ読んでもらいたい(笑)。あとは、当然それぞれの業界ごとで、いろいろなニュースが本当はあるはずなのです。スルーしているか、そもそも見てないということが多いのですが、毎日とまでは言わないまでも、新しい動きがないかをチェックする習慣が大切だと思います。(第5回に続く)

この対談の動画はこちら

以下動画の目次 6.視点1: 場を創造して儲ける(22:42〜)より

無料メルマガ会員に登録しませんか?

膨大な記事を効率よくチェック!

IoTNEWSは、毎日10-20本の新着ニュースを公開しております。 また、デジタル社会に必要な視点を養う、DIGITIDEという特集コンテンツも毎日投稿しております。

そこで、週一回配信される、無料のメールマガジン会員になっていただくと、記事一覧やオリジナルコンテンツの情報が取得可能となります。

  • DXに関する最新ニュース
  • 曜日代わりのデジタル社会の潮流を知る『DIGITIDE』
  • 実践を重要視する方に聞く、インタビュー記事
  • 業務改革に必要なDX手法などDXノウハウ

など、多岐にわたるテーマが配信されております。

また、無料メルマガ会員になると、会員限定のコンテンツも読むことができます。

無料メールから、気になるテーマの記事だけをピックアップして読んでいただけます。 ぜひ、無料のメールマガジンを購読して、貴社の取り組みに役立ててください。

無料メルマガ会員登録